【vol.2】自転車抜きで1日の必要カロリーを考える

ひと月ほどこっそり書いていたこのブログ、おとといTwitterで公開したら、予想を遥かに超える反響が…!嬉しいです。読んでいただいてありがとうございます!
 
自転車やマラソンをされている方って、栄養の知識に詳しい人が多いので、私の知ってることなんて大したことないかなぁと自信がなかったんです。でも「勉強になります!」とか「次の記事楽しみにしてます!」なんて言っていただけて、とにかくめちゃくちゃ嬉しかったです。
このシリーズ、書いてみないとわからないのですが、10回くらい?続くんじゃないかと思います。ぜひお付き合いいただけたら嬉しいです。
 
前回vol.1では、食事と栄養を考える上で役に立つ小ネタの紹介でした。
今回から、「自転車乗りに必要なカロリー・栄養素はどれくらい?」という具体的なテーマに入っていくのですが、まずは自転車抜きの「日常生活で必要な分」について考えていきます。「ライドで必要な分」は後ほど、分けて考えます。
 
というのも、私たちはプロのように毎日自転車に乗っているわけではないですし、乗ったとしても日によってライドの内容が違って消費カロリーもバラバラです。このため、まずは「日常生活で必要な分」をベースにして、「ライドで必要な分」はライドの内容に応じてその都度プラスしていくという考え方のほうがいいと思います。
 

「日常生活に必要な分」のカロリー

ところで、「日本人はどれだけ栄養を取ればいいのか」の答えは厚生労働省が出している資料「日本人の食事摂取基準」*1にきっちりまとめられています。人体に必須のあらゆる栄養素について、どれだけ取るべきか、どこまでだったら取っても安全なのか、根拠が示された上で書かれています。食事と栄養のことを考えるなら、なくては語れない。アスリートを対象としたものではないのですが、一番使いやすいのと、webで誰でも読める資料なのでこちらを参考ににしていこうと思います。
 
ただこの資料、ページ数も内容も膨大です。なので、今回はこの資料に書かれている内容を簡単にかいつまんで「日常生活に必要な分」のカロリーの計算方法をご紹介します。やり方がわかればアプリを使わなくても自分で計算できるんです!(アプリを使うにしても、中身を知ってた方が面白いはず!)
 

基礎代謝量と身体活動レベル

基礎代謝量」って聞いたことがあると思います。これは、簡単に言うと生命維持のために何もしなくても必要なカロリーのことです。この基礎代謝量に、普段の生活の活動具合に応じた係数(1.5〜2.0程度)をかけ合わせると、1日の必要カロリーがわかります。(個人差を含めた推定値ではありますが)
 
ではまず、基礎代謝量はどのように求めるのか見ていきます。基礎代謝量は性別、年齢、体重によって左右されるので、表1から自分の性別・年齢に当てはまる数値を持ってきて、体重をかけ合わせると出すことができます。ちょっとかっこつけた式にすると以下のようになります。
基礎代謝基準値(kcal/kg体重/日)×体重(kg)=基礎代謝量(kcal/日)

◆表1 基礎代謝基準値*2 

自転車乗っている人が多そうな年齢を色付けしてます。

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基礎代謝基準値とは、体重1kgあたりの基礎代謝量の代表的な数値です。偉い研究者の先生がたくさんの人の基礎代謝を実測して割り出してくれました。例えば、体重60kgの30代男性の場合、基礎代謝基準値は22.3です。以下のように、体重を掛け合わせると基礎代謝量は1338kcalと出てきます。
22.3kcal/kg体重/日×60kg=1338kcal/日
 
この基礎代謝量もとに、普段の活動の度合いを加味していきます。そこで登場するのが「身体活動レベル」という項目です。身体活動レベルは、日常生活の活動量に応じてⅠ〜Ⅲの3段階に分類されます。それぞれのレベルに応じた係数を基礎代謝量に掛け合わせれば、1日の必要カロリーがわかります
 
ご想像のとおり、普段からよく動き回っている人ほど係数が大きく、デスクワーク中心であまり動かない人は係数が小さくなります。自分がどのレベルに該当するのかは、表2をもとに考えてみてください。なんかザックリ過ぎへん?と思った方は表3を参考にしてみてください。
 
◆表2 身体活動レベルとその活動内容*3

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◆表3 1日に何時間、どんなことをしているか*4

色付けしてある項目が、分かれ目になるかと。

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ここで注意したいのが「自転車抜きでの日常生活」で考えたい点です。上にも書きましたが、自転車で消費する分は別に考えるのがポイントです。

 
例えば、デスクワークと外回りが半々の仕事をしていて、徒歩と電車で通勤している方はレベルⅡぐらいになるかなと思います。その場合の係数は1.75です。(1.60〜1.90の幅があるので気持ち増減しても大丈夫です)先程の、60kgの30代男性を例に計算してみます。
基礎代謝量1338kcal/日×身体活動レベルの係数1.75=2341.5kcal/日
めでたく、この方の1日に必要なカロリーは2341kcalであることがわかりました!
 

1日に必要なカロリーの中身(小ネタ)

基礎代謝量に動いた分のカロリーを足したら、1日の必要カロリーになるんだよね!って思いがちですが、実はそれだけじゃなかったりします。そう、非常に嬉しいことに…食べたらその分カロリーが消費されるんです!!(ちょっとだけだけど)ご飯を食べたら暑くなるとか体温が上がったという経験はないですか?これは、食事を噛んだり消化吸収する際に、エネルギーが体の熱となって消費されることで起こります。専門用語では「食事誘発性熱産生」と呼ばれている現象です。
 
厚生労働省のwebページを参照*5すると、下記のようにあります。
食事誘発性熱産生でどれくらいエネルギーを消費するかは栄養素の種類によって異なります。たんぱく質のみを摂取したときは摂取エネルギーの約30%、糖質のみの場合は約6%、脂質のみの場合は約4%で、通常の食事はこれらの混合なので約10%程度になります。
タンパク質が凄いです。食事誘発性熱産生で消費される割合が高い!このため同じカロリーを摂取するなら、タンパク質から摂った方がダイエット効果は高くなるという、小ネタでした!
 
ただし、上で計算した1日の必要カロリーの中には、食事誘発性熱産生で消費される分もきちんと入っているのでご注意を。(割り増しにはなりません)
 
今回は小難しいお話になってしまいました。長々と読んでいただきありがとうございます。次回vol.3では、今回の計算した1日の必要カロリーの中で、タンパク質・糖質・脂質をどういった割合で取ればいいのか、というお話をしようと思います!
 
 

 

*1:日本人の食事摂取基準|厚生労働省 -- https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html

*2:「日本人の食事摂取基準(2015年版)」Ⅱ各論 エネルギー より作成 -- https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000083871.pdf

*3:「日本人の食事摂取基準(2015年版)」Ⅱ各論 エネルギー より作成 -- https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000083871.pdf

*4:「日本人の食事摂取基準(2010年版)」Ⅱ各論 エネルギー より作成(2015年版に書いているやり方はややこしかったので、古いですが2010年版の資料を載せました。) -- https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4e.pdf

*5:食事誘発性熱産生 / DIT -- https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-030.html