【レース時の補給の考え方】堺浜クリテ第2戦、90分エンデューロの補給実録

先週土曜日に堺浜クリテリウム第2戦のTTと90分エンデューロに参戦してきました。エンデューロは女子クラス2位!(女子のエントリーが20名を超えていたため表彰もしてもらえました)普段は平坦レースには出ず、集団走行が非常に苦手なため、ほぼ勢いと運と周りの方々の優しさで得られた結果だと思います。けれども、この好結果を下支えしてくれたのが、補給と食事だったのかもしれない、とも思っています。

せっかく栄養学のブログを書きながらレースに臨むので、このレースに向けてどんな食事や補給を摂ろうか色々と考えていました。本当はレース前に補給に関する記事をアップしようと準備していたのですが、なかなかまとまらず。そのままレース当日を迎えてしまうというオチに。

なので、今回は振り返りという形です。私がレース当日に摂った食事と補給について、栄養学的な考察を交えてまとめてみます!

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アップ50km+TT+90分エンデューロ

冬の体力づくりを目的にエントリーした今回のレース。TTとエンデューロは午後からで時間的に余裕があったため、アップを兼ねて自宅から会場の堺浜まで50km走ることにしました。会場到着後に昼食をとり、TT→エンデューロに出走というスケジュールです。流れを図に示してみました。

堺浜当日のスケジュール

このスケジュールをもとに食事や補給の計画を立てていきました。

 

カーボローディングを行うか

まず決めたのが、カーボローディングを行うかどうか。カーボローディングの要否を決める1つの基準に「競技時間が90分以上かどうか」というものがあります。今回はアップで2時間以上走るうえ、エンデューロは90分なので、本来ならカーボローディングが推奨される状況です。

けれども、個人的に今回のレースは練習が目的だったので、大掛かりな準備はしないことにしました。今後の本番レースに向けてカーボローディングのお試しをしても良かったのですが、なにせオフシーズンで気持ちが緩んでいたのが大きいですw

ただ、カーボローディングはしないにしても、レース前日に糖質を多めに摂取しておくだけでも多少の効果はあると思います。前日の金曜日は朝食に大好きなクリームパン、おやつにもクリームパン、晩ごはんにはいつも食べる量のご飯に加え、おかずにラザニアを投入。食べすぎ?1日だけやしええやろ、という適当具合です。厳密に栄養計算してないですが、おそらく脂質がオーバーしてた感がありますw

本来カーボローディングをするのであれば、摂取カロリーは普段と同じにしたうえで脂質を減らし、その分糖質からカロリーを摂取するというのが正解です。やたらめったら食べがちですが、意識して脂質を減らさないとカロリーオーバーになってしまいます。

なので今回私が前日にクリームパンやらラザニアやら食べたのは、脂質の面から見るとちょっとアウトです。太る原因です。ただ、糖質は十分とれたと思います。

 

レース当日の補給計画

今回はレース開始が午後なので、朝食は普段のライド前に食べるものと同じような内容にしました。パン2切れにハムエッグ、残り物の野菜スープにプロテイン1杯。必要な糖質は移動中・レース前に補給食として摂る計画です。当日の補給計画は図のようなイメージです。

堺浜当日の補給計画

補給は大きく分けて5回のタイミングでした。移動中①②と、レース前③④、レース中⑤。また、昼食も大きな補給源になります。それではそれぞれの内容を見ていきます。

 

移動・アップ中①②

最近、ライドの途中でパンを食べるのにハマっています。なので、今回の補給も基本的にパンにしました。(パンは種類にもよりますが、脂質が多く含まれる場合があるので、本当はおにぎりやどら焼き・カステラなどの和菓子系の方が優秀な補給食だと思います)補給で糖質を摂ることの重要性は前回の記事をご参考に。

  • ①:黒豆パン1個
  • ②:レーズンパンに練乳クリームがサンドされたパン1個

①は自宅からの持参でしたが、②以降に食べたパンは途中で寄り道した汐見橋アン・ナンナンというパン屋さんで買いました。おいしかったです!店頭に並んでいるパンは脂質が多いデニッシュ系は少なく、あっさりしてそうなものが多かったので補給食にはもってこいです。

f:id:wd19:20191216151421j:imageどのパンもおいしそう。またこの辺来るなら寄りたい。

非常にざっくりですが、小ぶりな菓子パン1個あたりのカロリーは300kcal程度。サイコンで確認すると、アップに要したカロリーは約600~700kcalだったので、走ったぶんは補えたことになりそうです。

 

昼食

レースに向けて、糖質をはじめとした栄養素を摂取するために大切な昼食になります。意識したのは、食べるタイミングです。

  • アップ・移動の直後に食べることによって、筋グリコーゲンの回復を早める
  • レース本番まで十分な時間を空けることによって消化の時間を確保する

 

まず、筋グリコーゲンの回復について。運動直後に糖質を摂取すると、時間を空けて摂取したときと比べて筋グリコーゲンの回復スピードがアップします。これは、運動をすることによって、骨格筋内に血糖を取り込む作用が一時的に高まることで起きる現象です。たんぱく質を同時摂取することによっても筋グリコーゲンの回復スピードを相乗的に上げることができます。

ただし、運動直後に急いで糖質を摂取する必要があるのは、その日のうちにレースやトレーニングが控えているときのみです。筋グリコーゲンの回復に十分な時間(8時間以上)が取れる場合は、そんなに急いで糖質を摂る必要はありません。たとえ糖質摂取が遅れて回復スピードが低下しても、筋グリコーゲン量は十分に回復することがわかっています。

消化の時間を確保ほうがいいというのは、よく知られている話だと思います。一般的に通常の食事はレースの2~3時間前に済ませておくことが勧められています。今回はTTが非常に短時間高強度なため、直前に消化しづらいものを食べると気持ち悪くなりそうだなと思ったので、消化の悪そうなものから順に食べました。

 

実際に食べた物はこちら。

  • 昼食:会場のブースで買ったピタケパブ
    寄り道で買ったカレーパン・ミルククリームサンド

ピタケバブ、写真を撮り忘れたのでお店のホームページのメニューを貼っておきます。ピタパンにキャベツと焼いた鶏肉、ドレッシングが挟まれていてとても食べ応えがありました。ちょっと油分が多めの印象なので、レース直前にたべるときついかもです。

カレーパンは焼きタイプのもの。揚げたものだったら脂質が多いので買っていませんでした。中のカレーもお店で作っているんでしょうね、おいしかったです。食べてる途中は周りにめっちゃカレーのにおいがする、と言われました。これだけ食べても、90分のエンデューロに向けては足りないと思い、ミルククリームサンドも追加。

ケパブのカロリーが不明ですが、仮に500kcalだったとして、パン1個300kcalが2個、計1100kcal程度の摂取です。こちらの記事の内容をもとに、私の自転車抜きの必要カロリーを計算すると約1800kcalのため、1食あたり約600kcalが目安となります。つまり、通常の昼食で摂取するカロリーの600kcalをオーバーした、500kcalがこれから走るTTとエンデューロに備えたものになります。

 

レース直前③④

昼食でたくさん食べましたが、TTとエンデューロで消費するカロリーのことを考えると、実はまだ足りていません。2年前に同じ堺浜で90分エンデューロを走った時のログを確認すると、1000kcal程度消費していたようなので、もう少し食べておいた方がいい計算になります。この辺の考え方は図にしてみるとわかっていただけるかなぁと思います。

カロリー概念図

図のピンク色の「残り」部分がこの日の昼食までの摂取で足りていないカロリーとなります。実際は、すでに体内に蓄えられている筋グリコーゲン(前日糖質多めに食べたのはこのため)や、脂質もエネルギー源として燃やすことができるため、「残り」の部分全てをカバーする必要はありません。けれどもエンデューロは長丁場で、途中エネルギー切れを起こしても気軽に食べられる状態ではないので、念のため補給しておきます。

③のソーダは水分が欲しかったけれど会場に自販機がなかったので、ブースで売っていた手作りの飲み物を買いました。添加物として甘味料が入っていない清涼飲料水のカロリーは100mlあたり30~40kcal程度カップサイズ的に250mlくらいだったので、100kcal弱は摂取できたと思います。TTで急激に息が上がって喉がやられたので、レモンシロップはありがたかったです。

④の粉飴ジェルはこちらのもの。1本100kcalです。スタートラインに並んでいるときに食べました。どこかのレースでいただいたものですが、何のレースだったか忘れましたw 色がついていないので、食べた後のゴミを持っておく際、白いジャージが汚れず助かりました。

持久系アスリート専用粉飴ジェル 40g×20本

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実はこれでも足りるか不安だったのですが、とりあえずエンデューロがスタート。 

 

レース中⑤

ドリンクにマルトデキストリン

レース中のドリンクにマルトデキストリン(粉飴)を溶かしておき、糖質を補給できるようにしていました。約600mlのボトルに40gの粉飴を入れて、実際にレース中に飲んだのは半分程度。ざっくり計算すると粉飴1gあたり4kcalなので、4kcal/g×40g×0.5=80kcal程度の摂取です。

摂取できる糖質・カロリーの量は知れていますが、わざわざドリンクを準備したのには訳があります。「中枢性疲労」の軽減のためです。

疲労には、筋肉疲労に由来する末梢性疲労と、脳が主体となって感じる中枢性疲労の二つがあります。脳や中枢神経系のエネルギー源はグルコース(血糖)です。(グルコース・グリコーゲンなど糖質の種類の解説はこちら)運動中は脳内の神経伝達物質が増加するのですが、それを作るために血糖が必要になります。運動中は普段より増して脳も糖質を欲しがるということです。しかし運動中は筋肉でも血糖を消費するため、脳がエネルギー切れを起こすことがあります。これによって引き起こされる疲労感や集中力の低下、パフォーマンスの低下を中枢性疲労と呼びます。

運動中、少量の糖質を口に含むだけでも、この中枢性疲労が軽減されるのではないかということが最近わかってきました。口の中にある糖質センサーが反応して脳へ刺激が伝わると、中枢性疲労が軽減されると考えられています。

 

BCAAも追加

また、中枢性疲労対策として、マルトデキストリンに加えてBCAAのパウダーもドリンクに溶かしておきました。ご存知かと思いますが、BCAAは分岐鎖アミノ酸の略称で、具体的にはバリン・ロイシン・イソロイシンと呼ばれるアミノ酸のことを指します。BCAAは筋肉でエネルギー源として利用できるため、運動中は血中の濃度が低下します。

人体にとって、脳は非常に繊細で重要な器官のため、脳内に流入する成分は厳密に管理されています。BCAAもその管理下にあって、脳に流入するためには特別な輸送体(運ぶための船のようなもの)が必要です。ただ、この輸送体はBCAAだけでなく、トリプトファンというアミノ酸を脳に運ぶためにも使われています。共用なのです。

普段はBCAAとトリプトファンはバランスが取れた上で脳に運び込まれていますが、運動によってBCAAの濃度がトリプトファンと比べて相対的に低下すると、脳に流入するトリプトファンの量が増えてしまいます。トリプトファンは脳内でセロトニンという神経伝達物質を作る原料であるため、脳内に流入する量が増えるとセロトニンの生成量が増加します。セロトニンは精神的な安定に必要な物質ではありますが、多すぎると疲労を感じさせる原因になると言われています。

このため、運動中にBCAAを摂取することでBCAAの血中濃度を回復させ、トリプトファンとのバランスを取り戻すことで中枢性疲労を軽減させると考えられています。実際、運動中にBCAAを摂取することでレースタイムが短縮されたという報告があります。*1*2

個人的にはマラソンをしていた頃、レース中にアミノバイタルを食べるとしんどさが軽減する気がしていました。

f:id:wd19:20191216152808j:image棚の奥に眠っていたBCAAパウダー。グルタミンも入っているので筋グリコーゲン回復にも寄与するかも。

 

今回のエンデューロではレースの流れについていくのに必死だったので、このドリンクを飲んだからどうなったという変化を感じることはありませんでしたが… 集中力を途切れさせず、無事最後まで走りきるのには一役買ってくれたかもしれません。

 

肝心のレースの方はというと…

ここから簡単にレースレポです。コース1周(約1km)TTの30分後にエンデューロがスタート。開始15分までは先頭集団。かなりハイペースだったので、この時間帯が一番キツかったかも。集団が大きかったせいでコーナー前後の減速・加速の落差が激しい。加速時はPWR5倍近くで踏み倒しても置いていかれそうになる。周りに囲まれるのが怖くて、終始アウト側を走らざるを得なかったのも辛かった。

15分で心折れた後、数十m先に目標にしていたJさんの背中を発見。必死で追いついて一緒に走らせてもらうことに。Jさんに「後ろ入っていいよ!」と言ってもらえても、なぜかうまく後ろに付けない…(集団の中でチョロチョロせざるを得なくて、周りに迷惑かけてたらどうしよう)この時間帯は女子が大半の集団を男性が引いてくれたので、かなり楽に進められた。コーナリングが下手なせいで、コーナーでガタついたり、前との距離が開いたりする現象は繰り返された。

 

30〜45分くらいから、実況のアナウンスでチームGSJとよく呼ばれていたので、おかしいなぁと思っていた。目の前には私より先に走る女子がたくさんいる気がしていた。後半に入ってくると、女子集団にも男性が多く加わって、集団が大きくなってペースも上がってくる。何度もJさんの背中が遠くなって「もうダメだ」と思ったけど、しばらくしたらなぜか追いついていた。

残り30分を切った頃から気持ちが楽になってきたのと、レースの状況がなんとなくわかってきた。私の前方を走っているJさんともう1人の方が女子の先頭のようだ。ギャラリーから「脚を休めろ!」と聞こえてきたので、変に飛び出したりしないように、集団についていくことに集中する。脚の疲労と腰の痛みがすごかったけれど、折を見ながらペダルの上に立って脚を休ませながら凌ぐ。ペダルの上に立つと不思議と回復する。漕ぎ続けないと止まるヒルクライムではできない技。

ギャラリーから「あと3周!」と聞こえてにきて、やっとこのしんどいレースから解放されると思って嬉しくなる。何台か先のイン側前方に、前の2人の背中が見えている。ラスト周回のまでこの状態。私はだいぶアウト側にいたせいで、どこかで飛び出さないと2人に近づけないと考えた。ラスト周回の半分を過ぎた辺りで思い切って飛び出す。先頭を争う状況なんて今まで経験したことがないので戦略もなにもなかったけど、なんとなく。スパートをかける脚はなんとか残っていた。補給のおかげか!?

ここで先頭に立ったけど、苦手なコーナーでダメなコーナリング。両側に人がいると恐怖で腰が引けて上手く曲がれない。減速してしまって周りに捲られた結果、人に埋れて加速したくてもできない。そんなことをしているうちに1位の方にアウト側からすーっと抜かれる。ゴール手前で必死に踏んだけど時すでに遅し。

初めて表彰台のてっぺんを取れたかもしれない状況で逃しちゃったけど、レース後は清々しい気分でした。あんなにコーナリングと位置取りが下手なんだから、負けたのは当たり前だよなぁと妙に納得してました。女子集団で最後まで走らせてもらえたことがただただ嬉しかったです。

 

総括

2年前、同じ90分エンデューロに出た時は、ラストにはへろへろになっていて、殆ど踏めなかった記憶があります。その時と比べて、積み重ねた練習量が違うというのもありますが、補給や食事の対策があったかないかも差になったんじゃないかなぁと考えています。

今回私がした対策は、偶然上手くいっただけかもしれません。結果が良かったので上手くいったと勘違いしている可能性だってあります。(たまたま会場のブースに出ていたものの中から機転を利かせて食べたものもありますし、パンばっかり食べるのがいいわけではないですし)また、すべての人にとっての正解ではないとは思います。体格や消化能力、代謝の得意不得意によって、最適な補給内容は変わってくるはずです。

けれども、戦略的に補給のことを考えてレースに臨むことは絶対プラスに働くと思います。たとえ失敗しても、次に活かせます。レースに向けての補給の考え方について簡単にまとめます。

 

  1. 事前にカーボローディングが必要かどうか検討する
  2. レース当日のスケジュールと食事のタイミングを確認する
  3. アップとレースの総計で何kcal消費するのか大体把握する
  4. 3の消費カロリー全てをカバーする必要はないが、当日の食事と補給で十分にカロリーを取れるように計画を立ててみる

 

3は、過去のログなどを参考にざっくり把握するだけいいと思います。4も、あくまでも計画なので、おにぎり⚪︎個ぶん、ジェル⚪︎個ぶんぐらいの見立てで準備しておく。あとはレース当日、お腹と相談しながら食べるものを決める、といった感じになると思います。

 

以上、レースレポなのかグルメレポなのかよくわからない内容でしたが、ここまで読んでいただいてありがとうございました!(8000字に迫る勢い)

 

f:id:wd19:20191216212350j:image最後に後ろ姿。スタート前にかわいいと褒められたゴリラプリント。りっつさんに撮っていただきました。ありがとうございました!

 

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なお、今回の記事を書くにあたって参考にした書籍はこちらです。

スポーツ栄養学: 科学の基礎から「なぜ?」にこたえる

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スポーツ栄養学 (イラスト)

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