【vol.5】サイコンの消費カロリーってどうやって計算してるの?

これまではライドを抜きにした日常生活での消費カロリーと栄養素のお話をしてきました。ライド抜きの消費カロリー計算方法はvol.2をご覧ください!

wd19.hatenadiary.jp

今回から、 実際のライドで消費するカロリーについて考えていきます。

自転車乗りは「日常生活での消費カロリー」と「ライドでの消費カロリー」の両方を正しく把握することではじめて、トータルで何を食べればいいのか?どのように体重管理をしていけばいいか?を考えていけると思っています。(そうなのか?)なので、今回は栄養という観点から少し離れて、純粋に「自転車に乗ることで体内で燃やされたエネルギー」について突き詰めていければと思います。(専門外なのでドキドキ…)

◆もくじ

 

サイコンのカロリー表示とはいかに

「ライドでの消費カロリーなんて、サイコン見ればわかるやん」と、かつては軽く考えていました。けれどもよくよく考えてみると、サイコンに表示されるカロリーってどうやって計算されてるの?ほんとに正しい数値なの?という疑問が浮かんできませんか。

そう思って色々調べてみたんです。そしたら沼にハマるハマる…全然確かな情報が見つからない。結論から申し上げると、何を基準にしてどんな計算方法でカロリーを算出しているのか?という詳しい情報は企業秘密でオープンになっておりません。

このため、ここからの話は大まかに公開されている情報をつなぎ合わせた、あくまでも私の推測です。もしかしたら間違っている可能性があることをご了承いただけたら幸いです。

 

サイコンの消費カロリーの算出方法は主に3通り

サイコンの消費カロリーは、おおまかに分類すると以下の3通りの方法で算出されているようです。

  1. パワーメーターによる仕事量 から算出する
  2. 心拍数とVO2Max から算出する
  3. 走行速度と時間(+αで体重や車体重量、加速度など) から算出する

これらを見ると、「どの方法が一番正確なの?」という疑問が湧いてくるかもしれません。この記事を書くにあたって、一通り調べた感想からいうと「12>>>超えられない壁>>>3」の順に正確なんじゃないかな、という印象です。*1その理由はこの先を読んでいただければわかるので、長いですがぜひ読んでみてください!

 

そして、どのサイコンがどの方法を採用しているか、というのも気になると思います。大前提として、パワメを使わなければ1はできないし、心拍計をつけなければ2も不可能です。ただし、いくらパワメや心拍計をつけていても、サイコンにそれらのデータを使った消費カロリー計算機能が搭載されていなければ、1や2の方法を使うことはできないのです。

じゃあ、3しかできないサイコンを使っている人は、消費カロリーなんでゴミみたいな数字なのか!?←これにも一応策はあります。ちょっと面倒だけど…

 

今回、例に挙げるサイコンはGARMIN Edge520です。このサイコンには1~3すべての計算機能が搭載されています!

GARMINのデータを検証!

それでは、実際のログと消費カロリーを見比べてみたいと思います!今回は私が愛用しているGARMIN Edge520で取ったログをGARMIN connectで見ていきます。

東京にいた頃よく走っていた尾根幹→小山田周回のコースを基準にして比較。走った日によって距離と獲得標高が多少違っていますが、実際の消費カロリーとしては大差はないはず(はず…)。

 

まずはパワメあり心拍計ありのパターン

こちらは2018年5月19日のライド、GARMIN connectに表示されたデータです。

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ここでは上で挙げた算出方法1「パワーメーターによる仕事量」で消費カロリーが求められています。心拍数のデータも取っていますが、パワメのデータが優先して使われるということです。

こちらで注目したいのが、消費カロリー1154kcal運動量1129kJ。似通った値ですね。パワトレをしている方なら既にご存知と思います。

ここで運動量といわれているのがパワーメーターで測定された仕事量(kj)です。仕事量とは、簡単に言うとペダルを回すのに使われたエネルギーを数値にしたものです。ただし、ペダルを回すのに使われたエネルギー=消費カロリーではありません

人間は自転車を走らせるために、糖やら脂肪やらを燃料にしてエネルギーを作りだします。けれども、そのうちペダルを回すのに使われるのは多くても20~25%だといわれています。残りの大部分は熱になってその辺に放散されます。(ローラーを回すと暑くなるのはそのせいです)このように、「燃やしたエネルギーのうち、ペダルを回すのに使われた割合」のことを「熱効率」といいます。

 

このため、仕事量(kj)から消費カロリー(kcal)を求めるためには以下のような処理が必要です。今回GARMIN connectに表示された1129kJという数値を例に計算してみます。

  1. 単位の変換:1kj=4.184kcalなので、1129kj×4.184kcal/kj≒269.8kcal
  2. 実際に体内で燃やされたカロリーを算出:熱効率23%とした場合、269.8kcal÷0.23=1173kcal

仕事量から消費カロリーを求めるために色々計算すると、結局のところ、仕事量と似たような数字の消費カロリーが出てくる、ということです。

今回GARMIN connectに表示された消費カロリーは1154kcal。近いですね。GARMINが何%の熱効率で計算しているかはわかりませんが、大体の考え方としてはこのような感じだと思います。

ただし、熱効率20~25%というのは、エリート中のエリートを対象にした調査から出てきた数字です。私たちのようなホビーライダーの場合、ペダリング効率や体の使い方がエリートより劣っていることが考えられるので、もしかしたらもっと低いかもしれません。その場合、実際の消費カロリーはもっと高くなる可能性がありますね。

 

このあたりの内容は、パワトレの教本「パワー・トレーニング・バイブル」に記載されています。

パワー・トレーニング・バイブル

パワー・トレーニング・バイブル

 

 

次にパワメなし心拍計ありのパターン

2018年3月31日のライドのデータです。当時はパワメデビュー前。

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ここでは算出方法2「心拍数とVO2Max」で消費カロリーが求められています。

ところで、なぜ心拍数とVO2Maxで消費カロリーがわかるのでしょう。実は、人間には「酸素を1リットル体内に取り込むと、約5kcal消費する」という普遍的な法則があります。このため、一連の運動で総計何Lの酸素を取り込んだかわかれば消費カロリーもわかる、というカラクリを軸に算出されているのです。

また、VO2Maxは最大酸素摂取量(ml/体重kg/min)と呼ばれている値で、その人が限界突破の運動をしたとき、1分間に体重1kgあたり何mlの酸素を体内に取り込めるかを示した値です。この値は年齢や性別で推定できるうえ、GARMINであればライドデータを元に勝手に計測してくれますよね。

たとえば体重60kgでVO2Maxが50ml/体重kg/minの人が、限界突破の運動を10分間行った場合、50ml/体重kg/min×体重60kg×10min=30000ml、つまり30Lの酸素が体内に取り込まれたことが計算できます。酸素1Lあたり5kcalなので、5kcal/L×30L=150kcal消費したことがわかります。

 

そして、限界突破の運動をしているときの心拍数が、最大心拍数です。実際の運動したときの心拍数が、最大心拍数に対して何%なのかがわかれば、VO2Maxに対して何%の強度で運動しているかも算出することができます。例えば、VO2Maxに対して50%の強度で10分間運動したということになれば、先ほどの例で計算すると、50ml/体重kg/min×0.5×体重60kg×10min=15000ml、つまり15Lの酸素が体内に取り込まれたとわかるわけです!

手短に説明する関係上、多少語弊もあるかもしれませんが、こんな雰囲気で心拍数から消費カロリーが求められています。GARMIN Edge520の場合、ここに身長・体重・年齢・性別・アクティビティクラス(運動習慣のレベル)などの情報が独自に加味されて、より正確に消費カロリーを求める仕組みがあるようです。(Firstbeatという会社の技術が使われているらしい)

 

この方法で出てきた1164kcalという数字、上で紹介した「パワーメーターによる仕事量」で求めたカロリーと比べると、そんなに大きな差はないように思えます。距離と獲得標高が多少違うので正確なことは言えませんが、十分使えるレベルじゃないでしょうか。

 

なお、心拍数による消費カロリー計算に対応しているのは、GARMINだとEdge500番台以降と130で、それより前に発売された機種にはこの機能は搭載されていないようです。*2*3*4*5*6

  

最後にパワメも心拍計もなし、のパターン

2018年1月2日のライドのデータ。あまりに寒くて心拍計すらつけることを放棄した日。この日の消費カロリー、ぶっ飛んでいます。

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消費カロリーが2172kcal!?ライド内容は5月19日、3月31日とたいして変わらないはずなのに、消費カロリーが倍近くなっています。というのもこれ、算出方法3「走行速度と時間」で求められたカロリーです。斜面の勾配や風による抵抗が考慮されないので全然正確じゃないですw 下りでも思いきりカロリーがカウントされますから…

じゃあ、パワメも心拍計も使っていない勢(もしくはサイコンが算出方法3にしか対応していない勢)は、消費カロリーなんでゴミみたいな数字なのか!?

冒頭にも書いた通り、一応策はあるんです。ただちょっと面倒なんです。去年まではすごく簡単だったのですが、アプリがアップデート(改悪?)されちゃって。ヒントはStravaです。これは次回紹介します!

 

結論(急いでる方はここからどうぞ)

 長くなりました。ここまでの内容を表にまとめるとこんな感じです。

GARMINで採用されている(と考えられる)消費カロリーの計算方法 f:id:wd19:20191107102144p:plain

(補足)GARMIN以外のサイコンの場合

パワメの仕事量から消費カロリーを求める場合、GARMIN以外のサイコンでも、出てくる数値にさほど大きな違いはないと思います。仕事量にかけ合わせる熱効率が多少違うくらいではないでしょうか。

一方、心拍データから求める場合、サイコンによって様々な計算方法が取れられているようです。VO2Maxをどのように設定するのか、心拍データをどのように処理するのか、で出てくる消費カロリーもある程度変わってくるかもしれません。

走行速度から求める場合は…最初から正確じゃないので機種間の違いを考える意味はなさそうです。


つまるところ、

  • パワーメーターまたは心拍計をつけていて、サイコンもそれに対応している:それなりに正確な消費カロリーが出てると思います
  • パワーメーターも心拍計も使っていない、またはサイコンが対応していない:ちょっその数字、信用できません

 という結論にたどり着きました!

 

次回はパワーメーターも心拍計も使っていない、またはサイコンが対応していないときの対策法をご紹介します。結構マニアックな内容なので、果たして需要があるんやろか?と不安になっております。

なので次々回の予告も。ライドの消費カロリーと日常生活の消費カロリー、この2つをどうやってつなぎ合わせるかです。これがわかればライドありの1日トータルの消費カロリーを把握できるはず!

以上、こんな長い文章読んでいただいてありがとうございました!!

 

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*1:ちなみに、本気の本気で正確に消費カロリーを調べようという場合、ライド中にガスマスクを装着して、体内に取り込んだ酸素の総量を測定しないといけません。体内に酸素を1L取り込むと約5kcal消費する、という普遍的な法則がわかっているため、この方法が最も正確なんだそうです。

*2:https://forums.garmin.com/sports-fitness/cycling/f/edge-520-520-plus/125403/calculate-v02-max-and-accurate-calories/695878#695878

*3:http://static.garmin.com/pumac/Edge_500_OM_EN.pdf

*4:https://www.firstbeat.com/en/consumer-products/products/

*5:https://www.firstbeat.com/en/consumer-feature/calories-burned/

*6:https://assets.firstbeat.com/firstbeat/uploads/2015/10/white_paper_energy_expenditure_estimation.pdf