【vol.7】ライドがある日の食事・補給の考え方。糖質が最優先!

ロードバイク乗りのカロリーと三大栄養素の理論的な部分について、一応シリーズものとして書いてるんですが、前回のvol.6からかなり日にちが空いてしまいました。というのも、今回の記事はまとめづらくて書くのにものすごく時間がかかってしまったんです。悩みに悩んで書いたので、何かのお役に立てばいいなぁと思っています。

 

vol.2では「ライド抜きの消費カロリー」vol.5では「ライド時の消費カロリー」の計算方法についてお話ししました。今回はそのまとめです。ライドがあった日の総消費カロリーと、その中でどの栄養素をどれくらい摂取したらよいのかを考えます。

 

ライドがあった日の総消費カロリーは?

ライドがあった日の総消費カロリーは、シンプルに合計すればOKです。「ライド抜きの消費カロリー」「ライド時の消費カロリー」となります*1

食事記録アプリのMy fitness palにGARMIN connectを連携させると、この合計値がわかりやすく表示されるので、例として見てみましょう。My fitness palの1日ごとの食事内容を記録するページには、このような式が表示されます。

 

「目標」というのがMy fitness pal上で設定された「ライド抜きの消費カロリー」、「エクササイズ」はGARMIN connectから吸い上げた「ライド時の消費カロリー」です。この日はトータルで2814kcal消費したことがわかります。

GARMIN connectでも「カロリーイン/アウト」*2という項目で同じように表示されます。(スクショ載せたかったのにうまく同期できなかった…)

 

ライドがあった日の摂取カロリーは、消費カロリーから摂取カロリーを差し引いた「残り」の数値がマイナスにならないように意識していくことになります。減量が必要な時は、目標ペースに合わせて「残り」をプラスの値にしていくことになりますね。

これでトータルどれだけのカロリーを摂ればいいのかはわかりました。けれどもその中身は?エネルギー源になる栄養素、糖質・たんぱく質・脂質のうち、どの栄養素からどれだけ摂取すればいいのでしょう?

 

ライドがあった日の糖質・たんぱく質・脂質のバランスは?

「ライド抜きの消費カロリー」における糖質・たんぱく質・脂質のバランスついては、vol.3vol.4でお話ししました。普段からロードバイクに乗っている人の場合、まずたんぱく質の摂取量を優先して決定して、その残りから脂質と糖質を摂取していく考え方です。

糖質・たんぱく質・脂質の摂取バランスの決め方
  1. まずはたんぱく質の摂取量から決める:1.5~2.0g/体重kg/日程度
  2. 食生活を考えて脂質のエネルギー比率を決める:20~30%
  3. 1日の必要カロリーからたんぱく質・脂質のカロリーを引いて、残りのカロリーから糖質の摂取量を決める

ここに「ライド時の消費カロリー」が加わった場合は、少し視点が変わります。ライド時にエネルギー源として消費される糖質と脂質のうち、糖質の補給を最優先に考えていく必要があるのです。

 

「糖質の補給が最優先」の理由

なぜ糖質の補給が最優先なのか。その理由を知るためには、「エネルギーを作りだす時に、筋肉の中で何が起きているのか」を理解するのが一番です。難しくて敬遠されがちなエネルギー代謝のお話を、できるだけやさしくわかりやすく、心を込めて解説します。

 

エネルギー物質を作る生産ライン

まずは根本の話。私たちの体は、筋肉が収縮(縮まる)することで関節が伸びたり縮んだりして動きますよね。これは、筋肉の中でATPというエネルギー物質が反応することで起こっている現象です。このATPがたくさんあれば、筋肉はガンガン収縮しまくることができるのですが、悲しいことにATPは保存の利かない物質です。必要な時に必要なだけ作りださなければなりません

 

ATPを作り出すために、人間は細胞の中に以下のような3つの生産ラインを持っています。回りくどくてややこしいやり方なんですけどね…。人間の体って、ガソリン燃やせば車が走る、みたいにシンプルにいかないんです。これからそれぞれの生産ラインについて見ていきます。

ATPを作り出す3つの生産ライン
  1. とりあえず糖質を浅く燃やして手っ取り早くATPを作るライン(解糖系)
  2. 1でできた糖質の燃えカスをさらに燃やしてATP産生装置の燃料を作るライン(クエン酸回路)
  3. 2でできた燃料をATP産生装置にぶっこんで大量のATPを作るライン(電子伝達系)

 

ライン1:解糖系

今から体を動かすぞ!となると、まず1の生産ラインで糖質を燃やしてATPを作り出します。けれどもここでは浅くしか燃やせないので作り出せるATPにも限度があります。時間にして30秒から1分半が限界です。ライン1を回すにあたっては酸素が必要ないため、よく無酸素領域なんて言葉が使われます。

 

ライン2:クエン酸回路

ライン1で中途半端に燃やした糖質の燃えカスを原料に、ATPの燃料を作るのがライン2です。少し難しくなりますが、ライン1でできた燃えカスとは「アセチルCoA」という物質です。ライン2ではまず、この「アセチルCoA」に「オキサロ酢酸」という物質を反応させてクエン酸という物質を作りだします。クエン酸はさらに7回くらい反応を繰り返して、この途中でATPの燃料(NADH、FADHという物質。実はこれB群ビタミンのナイアシンビタミンB2がないと作れません)が作り出され、ライン3へと運ばれます。そして反応の最後には「オキサロ酢酸」が作り出されます。

あれ?「オキサロ酢酸」ってライン2の最初に突然出てきたヤツだよね?そうなんです。実は、クエン酸から回り回って「オキサロ酢酸」を作り出すラインなので、クエン酸回路」という名前がついているんです。

 

ライン1と違い、クエン酸回路が反応するには酸素が必要です。ある程度長時間の運動はクエン酸回路が不可欠=酸素が不可欠であるため、有酸素運動と呼ばれます。

さらに、ここで出てくる「アセチルCoA」は糖質を燃やす以外に、脂質を燃やすことでも作りだせる物質です。一方、「アセチルCoA」の相手である「オキサロ酢酸」は糖質がないと作りだせない物質です。脂肪は体内に大量に蓄えられるのと、エネルギー効率がいいので少量でたくさんの「アセチルCoA」を作り出せます。このため「アセチルCoA」はいくらでも作れますが、糖質が不足して「オキサロ酢酸」が作れないと、クエン酸回路はそこから先へ進めません。つまり、エネルギーを作る反応が止まってしまう。これを言い換えると、糖質がなければ脂質はエネルギー源になれない!!ということなになります。いくらお腹周りにお肉があっても、糖質が足らないとハンガーノックになってしまうのはこれが理由です。

 

ライン3:電子伝達系

ライン3では、ライン2でできたATPの燃料(NADH、FADH)をATP発生装置に放り込んで、ATPを大量生産します。実にライン1の14倍のATPを一気に作り出します。さらに、ライン2は糖質と脂質がある限りは回し続けることができるので、そこからライン3でATPが持続的に作り出され、筋肉を長時間収縮させ続けることが可能になるのです。

ライン1~3までをまとめた落書き。ノートの隅に書いてる感じ。 

小難しいお話になってしまいましたが、ここまで読んでいただいて「エネルギーを作り出すには糖質がないと始まらない」ということをご理解いただけたらとても嬉しいです。

なお、ここで出てくる糖質とは、詳しくいうと「筋グリコーゲン(筋肉中に蓄えられれているグリコーゲン)」と「血液中のグルコース(血糖)」のことを指します。ハードなライドの後は筋グリコーゲンが消費されて、すっからかんな状態になっています。そんなときは、筋肉のパワーの源である筋グリコーゲンを回復させるのが最優先。そのために、ライドのあった日はまず十分に糖質を補給することが重要です。

 

しかし正確な糖質の消費量は闇の中

ここまで糖質の重要性について解説してきました。となると、実際にどれぐらいのグラム数の糖質を補給すればよいのか、気になりませんか。

理論上、消費したカロリーのうち何%が糖質由来で、何%が脂質由来なのかわかれば、それに応じて補給すべき糖質のグラム数もわかるはずです。けれども、その割合は運動強度運動を継続した時間によって大きく変化してしまうため、正確に把握するのは非常に難しいのが現実です。(ちなみに、運動強度が上がれば上がるほど糖質の割合が高くなり、時間が長くなればなるほど、脂質の割合が高くなります。脂肪燃焼に低強度長時間の運動が有効なのはこのためです)

そんな中色々な資料を確認すると、消費したカロリーの約50~80%程度が糖質由来なのかなぁ、という印象…確かなことが言えず申し訳ないです。

 

補給すべき糖質量はこのくらい?

ただ、運動時の糖質補給に関する資料に目を通すと、全体の消費カロリーの約60%程度を糖質から摂取すれば良さそうなことが見えてきます。表1はアスリート向けの三大栄養素の摂取量、摂取比率を示していますが、糖質のエネルギー比率は60%前後です。

◆表1 アスリートのための三大栄養所の摂取量とエネルギー比率*3アスリートのための三大栄養素の摂取量・摂取比率

 

また、表2ではトレーニング量に応じて推奨される糖質摂取量を示しています。ロードバイクに特化した資料ではありませんが、私の手元にある資料で一番参考になるのがこちらかなと思います。

◆表2 トレーニング量別の推奨糖質摂取量*4トレーニング量別の糖質摂取量

例を出して考えてみましょう。体重50kgでライド抜きの消費カロリーが2300kcalのAさんがいたとします。Aさんは100kmのライドで1700kcal消費しました。今回のライドは表2の超高強度に該当すると考えられるため、12g/体重kg/日で計算してみます。

12g/体重kg/日×50kg=600g/日の糖質摂取が必要ということになります。糖質1gあたり4kcalなので、これは2400kcalに相当します。1日の総消費カロリーは4000kcalのため、ここでも糖質のエネルギー比率は60%となる計算です。

強度が高ければ糖質の消費が増えるため、その日のライドの強度が高ければ糖質の摂取量を増やしても良さそうです。トータルの摂取カロリーが大幅にオーバーしない限り、糖質の摂取が多くなることは全く問題ありません。

 

ライドがある日の食事・補給の考え方

糖質の摂取を基本に考える

ここまでの内容をまとめると、「ライドがあった日は1日の総消費カロリーの約60%を糖質から取りましょう」ということになります。もし食事記録アプリなどで糖質の摂取量やエネルギー比率がわかるのであれば、これを意識して食事や補給を組み立てていけばいいわけです。

けれども食事記録を付けていない方が大半だと思います(私もつけてません)。その場合はどのように考えればよいでしょうか。先ほど出てきた表2を参考に自分の取るべき糖質量を把握し、ライド中の補給の度に意識していくだけでも違ってくるのではと考えています。

例えば、体重60kgの方が中くらいの強度で100kmのライドをする予定があるとします。表2から、10g/体重kg/日で計算すると、1日トータルで600gの糖質が必要です。朝昼晩の食事で300g程度は賄えるので、残りの300gはライド中か後で補給する必要があることがわかります。あとは、休憩で立ち寄ったコンビニで選んだものの栄養成分表示を見て、糖質の量が十分か確認していけばOKです。

グルメライドで好きなもの食べたのであれば、それが糖質多めなのか、脂質やたんぱく質の方が多めなのか考えてみて、その後の食事で調整すればいいと思います。

例えば、パンやうどん、丼ものを食べたのであれば糖質多めですよね。この場合、帰った後の昼ごはんや晩ごはんでは、糖質多めというよりはたんぱく質を意識した方がいいと思います(バターたっぷりのデニッシュやクロワッサンばかり食べた場合は別ですが)。

けれどもライドの昼ご飯がバーベキューや焼肉だった、ほぼくりむみたいな洋菓子系のスイーツばかり食べていたとなれば、脂質の比率が高くなり糖質が不足している可能性があります。帰宅後の晩ごはんは、脂質少なめ糖質多めにすることで、調整することができます。

 

糖質の次に重要なのはたんぱく質

このように、ライドがある日は糖質の補給を最優先にすることで、筋グリコーゲンの回復力を高めることができます。これによって、翌日の疲労感が軽減されたり、次のライドでも力を出しやすくなるのではないでしょうか。

そして、糖質に加えて摂取したいのがたんぱく質です。糖質とたんぱく質を同時に摂取した場合、糖質のみの場合と比べて筋グリコーゲンの回復速度が上がったという研究結果があります。また、トレーニング後にたんぱく質を摂取することで筋たんぱく質の合成速度が上がったという報告もあります。筋グリコーゲンの回復と筋力アップの両方の面で、たんぱく質の摂取は有効です。

通常たんぱく質は、糖質や脂質のようにエネルギー源として使われることはないため、消費カロリーが多ければ多いほどたんぱく質も大量に摂らなければいけないということはありません。けれども、上に書いたように筋グリコーゲンの回復と筋力アップの側面から、帰宅後にプロテインを飲む、晩ごはんにサラダチキンを追加するといった心がけはその後のパフォーマンスに活かされてくると思います。

一方、糖質が不足している場合はたんぱく質も要注意です。通常たんぱく質はエネルギー源として使われないと書きましたが、例外があります。糖質が不足してエネルギーが作り出せない場合、筋肉のたんぱく質を削ってエネルギーを作り出そうとしてしまうのです。

このため、糖質不足でハンガーノックになった場合などは、糖質以外にもたんぱく質も意識して多く摂取する必要があります。ライド中に筋肉が削られてしまうのを防ぐためには、ライド前の朝ごはんは糖質中心できちんと食べること、ライド中も糖質も補給することが重要です。

 

以上、ライドのある日の総消費カロリーと、優先して摂取すべき栄養素(糖質、その次にたんぱく質)についてお話ししてきました。脂肪は意識しなくても普通の食事をしていれば勝手に摂れますし、よほど絞っている人以外は元々体内にたくさん貯蔵されているのでご心配なく。

ライドがある日だからといって極端に糖質の摂取量を増やす必要はありませんが、糖質が不足すると回復が遅れてしまいます。食事記録をつけるとわかるのですが、ライド時は意外と糖質が不足しがちです。(脂質は簡単に摂れるのですが…)ぜひ意識してみてください。

 

とりあえずvol.1~7でシリーズ完結です

今回で一応、ロードバイク乗りのカロリーと三大栄養素のお話は完結です。今後は、vol.1~7で語ってきたことのまとめとか、この前みたいに補給にフォーカスしたりとか、減量のこととか、ビタミン・ミネラルのこととか、トピックを絞って書いていきたいなと考えています。

今回の記事はまとまりがなく、だらだらと長くなってしまった印象…スポーツ栄養って、単純明快に語るのが難しい気がします。だから機材やパワトレに比べて、あまり話題に挙がらないんだろうなぁ。個人的な希望としては、ライドやレース中の補給が簡単にわかって、朝昼晩の食事内容も簡単に記録できて、減量時に何を食べたらいいかアドバイスしてくれる、ロードバイク専用の食事アプリがあればいいのになぁと思っています。アイデアはあるので誰か作ってくれませんかw

あああ、7000字間近まで来ている。今回も長々と呼んでいただき、本当にありがとうございました!

 

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なお、今回の記事を書くにあたって参考にした書籍はこちらです。

スポーツ栄養学: 科学の基礎から「なぜ?」にこたえる

スポーツ栄養学: 科学の基礎から「なぜ?」にこたえる

 

 

*1:細かいことをいうと、運動後は消耗した体を回復させるためにしばらくカロリー消費が高まるようですが、それがどの程度なのか詳しいことはわかっていないそうなので割愛します。

*2:モバイルアプリからの場合、詳細>健康情報の統計>カロリーイン/アウトから確認できます。

*3:寺田新著「スポーツ栄養学」p92より作成、出典はInternational Olympic Committee.Nutrition for Athletes,2012.

*4:寺田新著「スポーツ栄養学」p92より作成、出典は日本体育協会スポーツ医・科学専門委員会監修『アスリートの栄養食事ガイド』第一出版.2006.

レース・ライド中の補給戦略!糖質の吸収スピードには限界がある

パワメを導入して以来、Training Peaksでトレーニングの管理をしているのですが、たまにメールが届くんです。全文英語なのでいつも未読スルーなんですが、今日はたまたま開いてみたんですよね。そしたらめちゃくちゃ興味深いブログ記事を見つけてしまいました!紹介&解説してみたいと思います!

 

 

「最も効率的に糖質を吸収させる方法」

原文はこちら。Training Peaks公式ブログです。

www.trainingpeaks.com

題名は「How to Optimize Carbohydrate Absorption」。ぱっと見てCarbohydrate(炭水化物)の意味しかわかりませんでしたw 素人なりに和訳してみると、最も効率的に糖質を吸収させる方法といったところでしょうか。この記事を読むと、例えば補給用ジェルの原材料を見て、どの製品がスピーディに糖質を吸収できるのかをある程度判断できるようになります!ちょっと気になりませんか?

 

まずは糖質の基礎知識から

このブログ記事の内容を理解するにあたって必要な基礎知識から解説します。

糖質の構造をわかりやすく表現するとすると、鎖の輪っかが大量に連なっていたり、二つだけくっついていたり、一つの輪っかが単体で存在していたりするんですよね。輪っかの種類と連なり方で、糖質の種類が決まるんです。

栄養学でよく出てくる輪っかNo.1といえば、グルコースブドウ糖とも呼ばれていますね。次に有名なのはフルクトース、果物に多く含まれているので果糖とも言います。あとは、ガラクトースくらいでしょうか。これ、単体ではあまりなじみがないですが、ガラクトースどうしが2個くっつくとラクトース、別の名を乳糖という糖になります。牛乳がほんのり甘いのはこいつのせいです。牛乳で下すのもこいつのせいです。

今回の話の主役はグルコースとフルクトースです。グルコースはたくさん連なって鎖状になると、その連なり方によって、でんぷんグリコーゲンセルロース(食物繊維)になります。グルコースは私たちのエネルギー源になる糖の最小単位なんですね。

f:id:wd19:20191126210336j:image落書き。大学時代は生化学や病態生理学の講義内容をイラスト入りでノートにまとめることに凝っていた。

一方、フルクトースも重要な存在です。フルクトースとグルコースが対になってくっつくと、スクロース、別名砂糖になります。また、フルクトースとグルコースをそのまま溶かしてシロップにしたもの、これはざっくりいうとガムシロップです。フルクトースは単体だと砂糖以上に甘味が強いんですよね。冷たい水にも溶けやすいですし。なのでよく清涼飲料水の甘味付けに使われます。そして、フルクトースも、グルコースと同様に体内でエネルギー源として使われます

 

糖質を吸収するためには

私たちは普段、ごはんやパンに含まれるでんぷんという糖質を摂取していますよね。けれどもこのでんぷん、そのままじゃ巨大すぎて体内に吸収できません(だってめちゃくちゃ長い鎖状だから)。なので小腸の消化酵素を使って、連なっている輪っかをバラバラに分解するんです。糖の最小単位、グルコースの状態にまで分解されて初めて、小腸の粘膜から吸収できるようになります。フルクトースとグルコースが対になった砂糖も同様です。仲良くくっついたフルクトースとグルコースが消化酵素によって切り離されます。

吸収されたグルコースはそのまま血液中に入り、筋肉や脳などのエネルギー源として利用たはれます。一方フルクトースは血液中に入った後、肝臓でグルコースに変換されてからエネルギー源となります。このためグルコースと比べ、エネルギー源になるまでに少し時間がかかるという特徴があります。

 

糖質の吸収スピードには限界がある!

今回のブログ記事でテーマとなっているのが、小腸がグルコースを吸収するスピードには限界があるという話です。限界とはどういうことかというと、小腸の粘膜からグルコースの取り込むのに、輸送体という船(SGLT1と呼ばれている)が必要なんですね。この船の数にはかぎりがあるので、一度に運べるグルコースの量は限られてしまう、ということなのです。今回のブログ記事には、1時間あたり60g(60g/時間)を運ぶのが限界と書かれています。つまり、一度にいくらたくさんの糖質(グルコースで構成されている)を食べても、体内に取り込めるのは1時間で60g(=240kcal相当)にしかならないのです。

1時間ペダルを回し続ければ、240kcalくらいすぐに消費してしまいます。例えば、100Wのパワーで1時間漕ぎ続けただけでも360kcalを消費する計算になります*1

ライド中のエネルギー源としては、あらかじめ体内に貯蔵してあるグリコーゲンも使えますし、脂肪も同時に燃やしているので、すぐさま糖質を補給しないとガス欠になる!というわけではありません。けれども長時間のライドやレースでは、途中で糖質を補給しないと足りなくなってしまいます。特に、ロードレースやエンデューロなど休憩なしで漕ぎ続けるシチュエーションでは、どれだけ素早く糖質を吸収できるかは重要なポイントになってきます。

 

フルクトースという切り札

そこで、切り札になるのがフルクトースです。

実は、フルクトースが小腸で吸収される際、グルコースを運ぶのとは違う種類の輸送体(船)が使われます。グルコースの船が満員御礼になっていても、フルクトースの船は別にあるのでその分運べる量が増えるわけです。このため、グルコースと同時にフルクトースも摂取すると、小腸から吸収できる糖質の総量を増やすことができるのです!

では、グルコースとフルクトースの比率はどのくらいがベストで、最大どこまで吸収スピードを高めることができるのでしょう?

今回のブログ記事ではフルクトース:グルコースの比率(おそらく重量比)が、1.0~0.8:1.0が最適なのでは、と結論付けられています。また、これによって吸収できる糖質の総量は最大144g/時間まで増やせるとか。(なんか倍以上に増えてるけどほんまかいな)

先ほどフルクトースはエネルギー源として利用されるまでに時間がかかる、とお話しましたが、グルコースと一緒に摂取することでその弱点はカバーされるようです。

 

フルクトース:グルコース比率が最適になる補給食とは!?

さらに、補給食(おそらくジェル)の原材料表示から、比率が最適になると思われる組み合わせが紹介されています!とりあえず、和訳をそのまま抜粋。

  1. マルトデキストリン、果糖、ショ糖
  2. マルトデキストリン、果糖
  3. ブドウ糖、果糖、マルトデキストリン
  4. ブドウ糖、果糖
  5. ショ糖、ブドウ糖、果糖

ちょっとこれだけだとイメージが湧きませんよね。ちなみにマルトデキストリンとは、グルコースがある程度の長さの鎖(でんぷんほど長くないので消化が楽)になったものです。要するにグルコースの塊です。

マルトデキストリンだけだとグルコース船が満員になってしまう。けれども2のように果糖(=フルクトース)が加わればその分吸収できる糖質の量が増える。また、ショ糖(=砂糖)はフルクトースとグルコースが対になったものでしたね。2にショ糖(=砂糖)を加えた1のパターンも比率的に良さそう、と考えられるわけです。

 

実際の補給食で検証!

ここからは、私たちが実際に使う補給食ではどうなのか、ということを考えていきたいと思います。ポイントは、原材料に書かれている成分に、グルコースだけでなくフルクトースが含まれているものも使われているか?です。では早速見ていきます!

 

ウイダーinゼリー エネルギー 

 どこのコンビニでも手に入る、メジャーすぎる補給食、ウイダーinゼリー エネルギー。原材料名にはこのように記載されています。

液状デキストリン果糖ぶどう糖液糖、マスカット果汁/乳酸Ca、クエン酸、ゲル化剤(増粘多糖類)、V.C、クエン酸Na、香料、塩化K、乳化剤、パントテン酸Ca、ナイアシン、V.E、V.B1、V.B2、V.B6、V.A、葉酸、V.D、V.B12

果糖ぶどう糖液糖とは、ざっくりいうとガムシロップです。果糖が50~90%含まれいます。フルクトースもある程度含まれているのでスピーディに糖質補給できそうな構成だと思われます。ちなみに、これ1パックに45gの糖質が含まれています。

 

ザバス ピットイン エナジージェル ピーチ風味

明治 ピットイン エナジージェル ピーチ風味 69g×8個

明治 ピットイン エナジージェル ピーチ風味 69g×8個

 

ドラッグストアでも買える割と手軽な補給ジェルです。小ぶりなのとキャップがついているのが便利で、個人的にはマラソンをしていた時よくお世話になっていました。

マルトデキストリン、食塩/クエン酸クエン酸Na、V.C、クエン酸K、甘味料(アセスルファムKスクラロース)、ナイアシン、香料、クチナシ色素、V.B1、V.B6

糖質として使用されているのはマルトデキストリンのみのため、フルクトースは含まれていません。マルトデキストリン自体は速やかにエネルギー源となる糖質ですが、フルクトースを同時に取る場合と比べると、吸収スピードは劣るかもしれません。

 

PowerBar パワージェル グリーンアップル 

【PowerBar GEL】パワージェル グリーンアップル1個

【PowerBar GEL】パワージェル グリーンアップル1個

 

こちらもたまにレース会場で売られているのを見かけます。ロードバイク乗りの間では結構ポピュラーな気がします。グリーンアップルフレーバーの原材料です。

デキストリン果糖、食塩、クエン酸クエン酸ナトリウム、香料、カフェイン

こちらはわかりやすいですね。グルコースとフルクトース、どちらも含まれています。これ1個あたりの糖質は30g。極端な話、20分おきに1個ぐらいのペースで食べても滞ることなく吸収できるのかもしれません。

 

ちなみに、食品の原材料表示は使用している重量の大きい順に記載されます。紹介した3製品全てでデキストリンがトップに来ているので、グルコースの比率の方が高いことがわかります。ですが、比率まではわかりません。原材料表示のみで得られる情報の限界ですね。

 

糖質の吸収スピードをさらに上げたいときは

どこまで需要があるかわかりませんが、糖質の吸収スピードをもっと上げたい!という場合。フルクトースを利用する以外にも2つの戦略があります。

 

小腸に運ばれるまでのスピードを上げる

口から食べたものはまず胃に運ばれ、(食べたのがジェルや液体状のものであっても)ある一定の時間は胃に留められます。食べたものが胃に入ってから、その先の小腸に押し流されるスピードのことを胃排出速度といいますが、この速度が上がれば吸収までの時間を短縮することができます。

液状の物を摂取した時の胃排出速度は1分間に約10mlです。けれどもあまりに糖質の濃度が高いと、このスピードが落ちてしまいます

補給用ジェルを食べたはいいものの、お腹に残る感じがする、気持ち悪くなる、という話を聞いたことがあります。一概に言えませんが、ジェルだと濃度が高すぎるため胃排出速度が落ちてスムーズに吸収されていないことも考えられます。

本当はボトルに溶かして濃度を下げておくのがよい*2のですが、それだと持てる量に限界がありますし、扱いづらくなるかもしれません。ですので、ジェルを食べたら十分量の水分も補給するといった心がけで十分ではないかなと思います。

 

糖質の吸収に体を慣らしておく

普段から糖質の吸収に体を慣らしておくことも、糖質の吸収スピードを上げる戦略の一つです。糖質エネルギー比率が高い食事を続けることで、小腸のグルコース輸送体を増やすことができるうえ、先ほど出てきた胃排出速度も上昇するようです。もし、ロードレースなど長時間高強度のレースを走る予定があるのであれば、事前の食生活で体を慣らしておくのもいいかもしれません。

 

吸収が速けりゃいいってもんじゃないけれど

ここまでは、とにかく短時間でいかに大量の糖質を吸収できるか、という視点でお話ししてきました。その最適解をまとめると以下の通りです。

  • ある程度糖質に体が慣れた状態であること
  • グルコースとフルクトースの両方を含む補給食を摂取すること
  • 糖質濃度が高くなりすぎないように同時に水分も摂取すること

 

ただし、これは高強度長時間のライドやレース中を想定した時の戦略です。このようなシチュエーションでは短時間に大量の糖質を吸収する必要が出てきます。一方、そうでないときに、ガンガン糖質を吸収してしまうとどうなるでしょうか?まず、吸収された糖質は血中に取り込まれ、血糖値が上がります。しかし使うあてがないと、脂肪合成の材料に回されてしまいます。悲しい。

レースが始まる前や、低強度のライド中はそんなに糖質を消費しないので、急いで吸収する必要はありません。むしろ吸収スピードがゆっくりな糖質を摂取することで、その後のライドに備えることができます。

その時の状況に合わせて補給を考えていくことで、ライドやレースがよりうまくいくようになればいいなと思います。

 

以上、「糖質の吸収」という視点で補給について考えてみました!今回も長いことお付き合いいただきありがとうございました!

(今回は途中で編集内容が一部消えてしまってちょっとショックでした。なんか雑な仕上がりになってるかもです。) 

 

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なお、今回の記事を書くにあたって参考にした書籍はこちらです。

スポーツ栄養学: 科学の基礎から「なぜ?」にこたえる

スポーツ栄養学: 科学の基礎から「なぜ?」にこたえる

 

*1:1Wのパワーを1秒間だすと1Jに相当。100Wを1秒間だすと100J。1時間は3600秒なので、100J×3600=360000J、つまり360kJ。消費カロリー(kcal)は仕事量kjとほぼ同じ数字となるため、360kcalとなる。

*2:8%程度が最適といわれている。

女性ローディーに読んで欲しい!調子が悪いときは、鉄分不足も疑ってみて

突然ですが、ロードバイク後の酒がうまいののんちゃんからのリクエストをもらいまして。(ありがとうございます!)私自身ずっと書きたかったネタなので気合を入れて書いてみました。目次見てもわかる通り長いです…!

 

「調子が悪い」の陰に、鉄不足

ロードバイクに乗っていて、どうにもこうにも調子が悪いって時ありませんか?だるい、力が入りづらい、練習してるのに記録が伸びない… あまりフォーカスされませんが、鉄不足がパフォーマンス低下の原因になっている場合があります。特に女性ローディーの方!ぜひ鉄についても意識してみてください。

 

女性ローディーが鉄不足になりやすいわけ

鉄不足や貧血といえば長距離ランナーがなるもの、という印象が強いです。けれども、日常的にロードバイクに乗るのであれば、鉄が不足する可能性は誰にでもあります。

ロードバイクは大量に汗をかくスポーツです。実は汗にも鉄が含まれていて、汗1リットルあたり0.18~0.42mgの鉄が流出しているという報告も*1。何もしなくても、1日あたり1mgの鉄が体外に排出されるといわれているので、ライドがある日はこの倍以上の鉄が失われる可能性があるわけです。また、アスリートは摂取した鉄の吸収が落ちるという報告も存在します*2

さらに女性の場合は月経で鉄が失われます。平均的な方でも、一回の月経で約17mgもの鉄が失われると言われています*3。2017年の国民健康・栄養調査の結果によると、20~40代の女性、つまり月経がある年代の約5人に1人が貧血の状態でした*4*5ロードバイクに乗っていること+女性であることを加味すると、鉄不足は他人事ではなさそうです。

 

鉄が不足すると

人間の体の中で、鉄は様々な形で存在しています。よく耳にするヘモグロビン、これは血液中の赤血球に含まれるたんぱく質の赤い色素です。ヘモグロビンは酸素と結びついて身体の隅々に酸素を運ぶ役割を持っています。鉄はこのヘモグロビンに必須の構成要素なので、不足すれば酸素を運ぶ力が落ちてしまいます

また、あまり知られていませんが、鉄は糖質や脂質を燃やしてエネルギーを作りだすために必須の栄養素でもあります。糖質や脂質を燃やす化学反応の最終段階で、エネルギー物質を大量に作り上げるとき、鉄を抱えたたんぱく質が必要になります。鉄が不足すると、糖質も脂質も燃えにくくなってしまいます。

さらに、最近では鉄不足は精神的な不調の原因となるともいわれています。以前こちらの記事で紹介した本「うつ消しごはん」にも、ページを大きく割いて鉄の重要性が説かれています。

wd19.hatenadiary.jp

 

隠れ鉄不足にご注意

貧血だったら、血液検査で異常が出るでしょ?職場の健診では異常なしだったから、心配いらな気がするけど…と、思う方も多いと思います。けれども、貧血の前段階=隠れ鉄不足に関しては、健診でするような通常の血液検査ではわからないんです。しかも、隠れ鉄不足の段階からすでに症状は出始めると言われています。

 

隠れ鉄不足とは

すでお話しした通り、鉄は人体にとって非常に重要な栄養素です。そのため、いざというときのためのストック(=貯蔵鉄)の形で肝臓などに蓄えられています。実に、体内の鉄の約3割が貯蔵鉄です。

鉄が不足すると、まずこの貯蔵鉄を切り崩していきます。これによって、ヘモグロビンなどの働きに影響が出ないように凌ぎたいところなんですが、残念ながら凌ぎきれません…。貯蔵鉄が減り始めた段階から、不調は表れだします。この状態が隠れ鉄不足です。

そして、さらに鉄不足が進行すると貯蔵鉄が底をつきます。ここで初めて、ヘモグロビンが減少し始めます。つまり、血液検査でヘモグロビン値が異常を示しているなら、体内の鉄の多くがすでに失われてしまっている状態だといえるのです。

 

隠れ鉄不足かもしれないと思ったら

一番確実なのは病院の血液検査ででフェリチンという数値を調べてもらうことです。フェリチン値を見れば貯蔵鉄の状態がわかります。女性の約3人に1人に、フェリチン値の低下がみられたという調査*6もあるくらい、隠れ鉄不足はありふれています。なので、不調が気になるのであれば、いちど調べても損はないと思います。

ただ、病院に行くほどでもないけど気になる…という方も多いと思います。そんなときは、普段の食事を見直していくところから始めてみてください!

 

鉄を摂取するときは吸収率を意識する

鉄のような微量ミネラル(1日の摂取量が比較的少ないミネラル)は、実は食べた分のうち、ごくわずかしか体内に吸収されません。一般的には、食べた分のうち15%程度が体内に吸収されると言われていますが、貯蔵鉄が多い人ほど鉄の吸収率は低く、少ない人は吸収率が高いことがわかっています。

なぜなら、これらの微量ミネラルの多くは重金属で(重金属といえば体内に溜まりすぎたら悪さをするイメージがありますよね)、摂りすぎも摂らなさすぎも体に悪いわけです。人間の体は、本当に必要な分だけ吸収できるように、コンディションに応じて腸管からの吸収の度合いを常に調節しています。

貯蔵鉄が少ない人は吸収率が上がるなら、鉄の摂取量は変えなくてもいいんじゃ?と思うかもしれません。しかし残念ながら、多少吸収率が上がっても、不足分は補えないようです。

また、食べた物のに含まれる鉄が動物性か植物性かによっても吸収率が変わってきます。つまり、何mg摂ればいい、という単純な話がしにくいのが鉄なのです…

 

「効率よく」鉄を摂取するための3ヶ条

そんな鉄の性質を考慮したうえで、どんな食べ物から鉄を摂取していけばいいのか見ていきます。テーマは「効率よく」。つまりどれだけ吸収率を上げられるかです。効率よく鉄を摂取する3ヶ条がこちらです。

  1. 吸収率の良い鉄を摂取する
  2. 吸収率を上げる栄養素と一緒に食べる
  3. 吸収を妨げる成分にちょっとだけ気を付ける

 

1.吸収率の良い鉄とは

先ほど鉄は動物性か植物性かで吸収率が変わると話をしました。吸収率がよいのは動物性食品に多く含まれる「ヘム鉄」という種類の鉄で、吸収率は10~20%です。

一方、ヘム鉄以外の鉄は非ヘム鉄と呼ばれていて、こちらは非常に吸収率が低く、5%程度と言われています。植物性食品に含まれている鉄は全て非ヘム鉄です。

このため、効率よく鉄を摂取するには動物性食品、つまり「肉・魚・卵」を意識して食べる必要が出てきます。それでは、動物性食品に含まれる鉄の量を見てみましょう。

◆表1 動物性食品の鉄・たんぱく質含有量動物性食品の鉄含有量

わかりやすく1食分に相当する重量で比較します。やはりレバーがダントツです。なんたってレバー=肝臓は鉄を貯蔵しておくところなので。 けれども現実的な問題、毎日レバーを食べらるか?というところです。その次を考えると、赤身の肉、魚類が手軽だと思います。また、貝類も活用できます。実は亜鉛が欠乏すると貧血が起こることがあるのですが、かきには亜鉛も豊富に含まれています。あさり水煮缶はできるだけ国内産のものをおすすめします。

この表にはたんぱく質の含有量も載せています。なぜなら、たんぱく質をしっかり摂取することが、結果的に鉄不足を解消する方向に働くからです。たんぱく質が豊富に含まれている食品には鉄も多く含まれる傾向があるうえ、貧血や鉄不足に関連する鉄以外の栄養素も一緒に含まれています。また、鉄とたんぱく質を同時に摂取することで鉄の吸収率が上がります。肉・魚・卵で総合的に栄養を摂取していくことが、鉄不足対策につながります

 

2.鉄の吸収率を上げる栄養素とは

植物性食品の鉄の含有量も見てみます。吸収率が低い非ヘム鉄ではありますが、大豆製品や青菜類には比較的豊富に含まれています。肉・魚・卵からの鉄摂取も限界があることを考えると、植物性食品も活用したいところ。

◆表2 植物性食品の鉄・たんぱく質含有量植物性食品の鉄含有量

そこで、非ヘム鉄の吸収率を上げる栄養素も一緒に摂取する、というワザが生きてきます。前の項に出てきたように、たんぱく質を同時に摂取すると吸収率が上がります。それに加えて、ビタミンCも鉄の吸収率をアップさせることができるんです。

鉄と同時に摂取したいビタミンCの量は25~75mg以上。表2のこまつなやほうれんそうを見ると、ビタミンCもある程度含まれているので吸収率を上げられることがわかります。

十分量のたんぱく質とビタミンCを組み合わせると、非ヘム鉄であっても吸収率は2~3倍程度にまでアップするといわれています。これを実際の献立に落とし込むと、肉・魚・卵のメイン料理に、ビタミンCを意識した野菜料理を組み合わせる、デザートに果物を食べる、といったイメージです。いわゆるバランスの良さそうなメニュー。意識して継続することで、鉄不足解消に役立ちます!

 

3.鉄の吸収を妨げる成分とは

一方、せっかく食べた鉄の吸収を妨げてしまう成分もあります。意外かもしれませんが、カルシウムやポリフェノール類といった、人体にとってプラスに働くような成分も鉄の吸収を妨げることがわかっています。もうこれは仕方がないです。そもそもカルシウムは必須の栄養素ですし。ある方面から見たらデメリットでも、また違う方面から見ればメリットになります。

けれども、少し意識するだけで、せっかくの鉄を無駄にしないで済むものもあります。それはコーヒーです。コーヒーに含まれるタンニン(ポリフェノールの一種)やカフェインは鉄の吸収を妨げる作用があります。ただ、コーヒーを全く飲まないようにする必要はなく、食後1時間程度あければ問題ないことがわかっています。*7。食後のコーヒーで一服したいところを、少しの間我慢すればよいだけです。緑茶や紅茶も同じです。

 

鉄サプリは必要か?

日本人の食事摂取基準(2015年)では、月経がある成人女性の鉄の推奨量*8は1日に10.5mgとされています。これを踏まえて少し計算してみましょう。もし、1日に肉類を200g、卵を2個を食べたとします。これだけだとせいぜい4mg程度。そのほかの野菜や大豆製品からも取ったとして、1日に何mg摂れるでしょうか。

すでに書いた通り、鉄は吸収率が変動するうえ、女性の場合月経によってどれくらいの量の鉄が失われるかも人それぞれです。このため、どれだけ摂れば十分ということは言えませんが、食生活に気を使っていても不足する可能性がある栄養素です。

もし鉄不足が気になるのであれば、サプリメントを活用することも一つの手です。けれども、いくつか念頭に置いていただきたい点があります。

  • 鉄の摂取は食事からが基本!たんぱく質やビタミンCなど、総合的に栄養を摂取していくことこそが、鉄不足対策となるため。
  • 鉄は摂取しすぎも問題になる!サプリだと必要以上に摂取してしまうリスクがある。

 

鉄の過剰摂取問題

鉄は体内に溜まりすぎるとよくないよ、というお話はだいぶ上でさせてもらいました。この話をもう少し掘り下げます。人間の体は、多すぎても少なすぎてもいけない鉄の量を、吸収率を上げ下げすることで入口のコントロールをしています。では出口もコントロールできるのか?実はそれが難しいため、過剰摂取が問題となってきます。

実際には「もう鉄いらない、十分」という状態になれば吸収率が下がりますし、よっぽどの量を長年摂り続けなければ過剰摂取による問題は起きないと思われます。けれども、鉄サプリを使用するときは、耐容上限量*9:成人男性では55mg/日、成人女性では40mg/日を超えないよう注意が必要です。(そもそも成人男性は鉄サプリが必要になるほど鉄不足になること自体非常にまれです)

正直な話、鉄サプリが必要なくらい鉄不足が気になるのであれば、病院でフェリチン値を調べてもらい、継続的にフェリチン値を見ながら鉄補給していくのが一番安全で確実ではあります。

 

もしサプリを使うなら

女性の方、月経前だけ・月経中だけ鉄サプリを飲んでる、なんてことはないですか?サプリに限った話ではないのですが、体内の貯蔵鉄を増やすためには、ひと月以上の単位でじっくり継続する必要があります。自転車をしていると、プロテインアミノ酸といった、割と短期的な視点で飲むサプリが多いと思いますが、鉄に関してはそうではありません。鉄サプリを使うなら、体調と向き合いながらこつこつ続けてみてください。

 

こつこつ継続しましょ

以上、特に女性ローディーが気を付けたい鉄不足について、目一杯まとめてきました。鉄については1日や1週間、多めに摂取したからといってすぐに変化のわかるものではありません。けれども、鉄不足を疑うことをきっかけに食生活を見直すことで、様々な方面から体調を下支えできるようになると思います!

今回も長くなりました(6000字超えちゃった)。お読みいただき本当にありがとうございました。ふー

 

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なお、今回の記事を書くにあたって参考にした書籍はこちらです。それ以外に参考にした資料に関しては注釈をご覧ください。

スポーツ栄養学 (イラスト)

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  • 作者: 大嶋里美,田村明,徳野裕子,古川覚
  • 出版社/メーカー: 東京教学社
  • 発売日: 2019/04/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る
 

 

 

*1:https://www.jfa.jp/football_family/medical/column05.html

*2:https://journals.lww.com/acsm-msse/pages/articleviewer.aspx?year=1980&issue=21000&article=00012&type=abstract

*3:日本人の食事摂取基準(2015年版)(2)微量ミネラル -- https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000042638.pdf

*4:https://www.mhlw.go.jp/content/000451760.pdf

*5:WHO基準の場合、成人女性でヘモグロビン値12.0mg/dL未満の場合、貧血とされる

*6:平成15年国民健康・栄養調査報告 第3部 身体状況調査の結果 149~166ページ -- https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou-chosa2-01/pdf/05a.pdf

*7:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/6402915

*8:ほとんどの人が必要量を満たす量

*9:この値を超えて摂取した場合、過剰摂取による健康障害が発生するリスクがゼロではなくなる

なんで冬太りするのか調べてみた

ここ1週間ほど、朝起きたらすごい空腹感なのと、お菓子の消費も激しいです。食欲の秋?明らかに食べる量が増えています。ここ数年、冬になると夏より体重が1~2kg増えるのが恒例になっていて、これからの季節は体重計に乗るのが辛いです。

パン特に最近パンの消費が激しいです…

 

「冬になると太る」というのは定説ですが、それがなぜなのか、明確な原因はあるのか、なんなら増えないように対策できないものか、と気になって調べてみたのでブログのネタにしてみました。大雑把な内容です。

 

なぜ太るのか

そもそもなぜ冬に太るのか。食欲が増して食べすぎるから?寒いせいで動かなくなるから?そんな疑問を解消すべく、とある論文にたどり着きます。

24時間思い出し法による各種栄養素摂取量の季節変動

↑これ、なぜかchromeだとPDF読み込めないんですよね…

各年代男女143人に、春夏秋冬の4回食事調査を行って、カロリーや栄養素の摂取量を調べたようです。この調査によると、秋冬に限ってカロリー摂取が増えてるわけじゃないみたいですね。ただ、体重の変化を調査していないので、冬太りとの関連はまったくわからないですが。

 

体重も一緒に調べてるのないかな、と調べたら出てきた論文。

Bioelectrical impedance法による体組成の季節変動

これは高齢女性19人と女子大生33人を対象に、夏季と冬季の体組成を調べたもの。高齢女性は冬季の方が体脂肪が高かった模様。(体重は増加気味だけれど、明らかな増加と言い切れる量ではなかった)その原因は、冬になると畑仕事をしなくなるから体を動かす量が減ったためではと書かれていました。けれども詳細な食事内容は調べていないので、その真偽は確かなものではないようです。

一方、女子大生の体組成は季節による差異は見られず。若いと太りにくいんか?冬でも活発やろうし。

 

寒くなると基礎代謝が上がるというけれど

あとは冬になると代謝が上がるから、むしろ実は痩せやすいなんて話も聞きますよね。基礎代謝量の季節変動に関する論文も見てみたり。なんかえらく古い研究ですが。

基礎代謝の季節変動について

 7人の自衛隊員(男性)の基礎代謝量を12ヶ月に渡って調べた研究。面白いことに、基礎代謝の高い方のピークが4月(年間平均に対して+5.2%)、低い方が10月(年間平均に対して-5.8%)。外気温が寒くなると体温を維持するために基礎代謝が上がると言われますが、この研究では気温の変動と2か月程度のずれが出てます。(研究によってはずれはないそう)

ただし、この研究の対象になっているのは訓練などで普段から外気にさらされている自衛隊員。冷暖房完備の環境で生活している人だと基礎代謝量の季節変動は見られないのでは、と言われています。冬のライドで外気に晒される自転車乗りはどうなんだろ?週2~3日外を走る程度ならあんまり変化しないだろうなぁ。

これを読んでもう一つ「へー」と思ったのが、普段の食生活の脂質エネルギー比率が高いと基礎代謝量の季節変動が起こりにくいそうです。日本人の脂質エネルギー比率は増加傾向ですし、なおさら変化しなさそう。

 

エネルギー比率って何?はこちらで紹介してます。

wd19.hatenadiary.jp

 

ざざっと調べて、冬太りの原因は結局よくわかりませんでした。ただ、冬は基礎代謝が増えるから少しくらい食べすぎても平気~なんて気を抜くと痛い目を見そうだということはわかりましたw

 

食欲の秋、その理由は 

ちなみに、秋になると食欲が増す科学的な理由は一応あるみたいです。先月のチコちゃんに叱られるでやっていたそうですね。秋になって日照時間が減ると脳内のセロトニンが減少して、セロトニンの原料になるトリプトファンというアミノ酸を欲して食欲が増すとか。

アミノ酸たんぱく質の原料です。たんぱく質は色んな種類のアミノ酸が大量に結合してできています。トリプトファンはそんなアミノ酸の中でも必須アミノ酸と呼ばれていて、人間には作り出せないアミノ酸なので、外から摂取しないといけない成分です。

ただ、そんなに難しく考えなくても、単純にたんぱく質を摂っていれば、自動的にトリプトファンも取れます。なので、トリプトファンがほしい~」というのを体が勘違いして「お腹減った~」と感じているのであれば、たんぱく質を摂ればいいわけです。

 

というわけで、秋の食欲には肉・魚・卵、しっかり食べよう、という結論になりました。

 

あ、脳内セロトニンを増やすためにはたくさんたんぱく質を摂ろう、という話はこちらの本にも詳しく書かれています。以前ブログに書いてご紹介してます。

うつ消しごはん―タンパク質と鉄をたっぷり摂れば心と体はみるみる軽くなる!

うつ消しごはん―タンパク質と鉄をたっぷり摂れば心と体はみるみる軽くなる!

 

 

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【vol.6】サイコンの消費カロリーが信用できない?そんな時はStravaで!

前回の記事、もはや栄養学ではなく単なるGARMINサイコンの研究みたいになってますw 個人的に、めちゃくちゃ頑張って書いた超大作なのでぜひご一読を。

wd19.hatenadiary.jp

では今回は何の研究かというと、Stravaの研究です!

果たして「ロードバイク的栄養学」と冠していいものか悩みますが、ロードバイクの栄養学を考えるのに必要な話(なはず)です。このまま突っ走ろうと思います。

 

前回vol.5では、パワメか心拍計を使っていてかつ、それに対応しているサイコンなら、表示される消費カロリーは結構使えそうな数字ですよ、とお話しました。一方、パワメもサイコンも使っていない場合、表示される消費カロリーはちょっと信用できないよ、という結論に至りました。

ではそのような状況の方々は、パワメか心拍計を追加投入するかサイコンを新調するしか、消費カロリーを知る方法がないのか!?というと、そうでもないのです!

 

独自の消費カロリー算出方法を持っているStrava

実はStravaは、パワーや心拍データがなくても、前回紹介した「パワーメーターによる仕事量」の方式で、消費カロリーを求めることができます

どういうことかというと、Stravaはパワメがない場合は独自の方法で推定パワーを求める機能を持っていて、そこから消費カロリーも知ることができるんです。

パワメを使用していない方は、StravaのPC画面で「推定平均パワー」という項目をご覧になったことはないでしょうか。(スマホアプリでは推定という言葉は使われずに、単に「平均パワー」という項目で表示されます)パワー(w)が求まれば、仕事量(kj)も求められます。

下の画面のエナジーアウトプットという項目が仕事量に該当します。前回記事で紹介した通り、仕事量(kj)の数字は消費カロリー(kcal)とほぼ等しくなるため、このライドの消費カロリーは大体1000kcal前後だろうと推測することができます。

Strava推定パワー

 

Stravaはどのようにして推定パワーを計算しているのか

となると、Stravaによる推定パワーがどの程度正確なのかが消費カロリー計算のカギを握ることなになります。

まずはStrava公式のサポートページ*1で公開されている、推定パワーの計算方法を見てみましょう。(英語のみの対応だったのでGoogle翻訳済みのキャプチャを貼り付けました。この下に、さらに詳しい説明が書かれています)

Strava公式サポートページのキャプチャ

計算に使われている4つの項目のうち、Strava側で絶対わからないのが風、つまり空気抵抗です。また、重力や加速度を求めるのに自転車と乗っている人の総重量が必要ですが、これもブレが出てくるところかと思います。その他にも、重力を求めるには斜度の情報が必要で、これもブレが出る要因になりそうです。

 

実際のStravaログで検証

では実際にお手並み拝見ということで、セグメントごとの実測パワーと推定パワーを比較してみます。(これをするために同じルートを2回走りましたw なお、GARMIN Edge520が修理中だったため、以下のどちらも旧モデルの500で計測しています)

◆パワメあり(実測パワー

実測パワーのセグメント一覧

 

◆パワメなし(推定パワー)

推定パワーのセグメント一覧

上りのセグメントでは大きくかけ離れた様子はありませんが、下り!!この区間、途中に上りや平坦は全くない、ひたすら下りの区間です。どちらの場合もペダルは止めていました。なのに推定パワーは60W。このあたりがStravaによる推定パワーの弱点といえそうです。

 

では、消費カロリー計算の大元となる仕事量を比較するとどうなるか。

◆パワメあり(実測パワー)実測パワーの仕事量

◆パワメなし(推定パワー)推定パワーの仕事量

あれ?だいたい同じくらい?なぜかわかりませんが、仕事量はパワメで実測した数値と似たところに落ち着いています。偶然かと思って他のパワメあり・なしのログを比較しても、だいたい同じような結果になっています。推定パワー自体は実測と異なる部分があるのに、謎です。どこかでうまいこと誤差を補正しているのでしょうか?

がしかし、この結果からStravaの推定パワーで求めた仕事量(≒消費カロリー)はおおよそ実測に近い数値になる、ということが言えそうです!

(パワメあり実測の「加重平均パワー」と「推定平均パワー」の数値が異なるのは、実測の場合、ペダルを止めて実質0Wの時間が含まれていないためと考えられます)

 

ただし、使用するサイコンによっては今回のような結果にならない可能性もあるので注意が必要です。なぜかというと、Stravaがパワーを推定するためには正しい斜度(高度)の情報が必要だからです。

GARMINには気圧高度計機能があるため、比較的正確に高度を計測することができます。しかし、高度計機能がないサイコンの場合、高度が不正確なため、推定パワーや仕事量、消費カロリーが実際とはかけ離れてしまう可能性があります*2

 

Stravaで消費カロリー見るならPC画面!アプリじゃない!

つまり、高度計付きのサイコンを使っていれば、パワメや心拍計がなくても、Stravaの消費カロリーを見ればOK!ということで締めくくりたかったところなんですが、一筋縄でいかない理由がありまして。

Strava公式の発表によると「Stravaが読み込んだデータの中にあらかじめ消費カロリーの情報が入っていれば、そちらを優先して表示させるよ」という仕様になっているそうなのです。(以前はStrava独自の消費カロリーが表示されていた。2018年7月のアップデートによる変更)

前回、パワメも心拍計も使わない場合は「走行距離と時間」によって消費カロリーが算出されていて、これは信頼できない数値であることをお伝えしました。Stravaに読み込ませるデータにこの「信頼できない数値」が入っていたら、それがそのまま消費カロリーとしてStravaに表示されてしまいます。

実際にパワメなし・心拍計なしの時のStravaログを確認してみると…やっぱりそうでした。GARMIN Edge500が「走行距離と時間」方式で算出した消費カロリー(1739kcal)がそのまま表示されています。

StravaPC画面での消費カロリー

こちらはPC画面表示なので、推定平均パワーから求められた仕事量(1168kj)も確認できます。この数字からおおよその消費カロリーを把握すればよいのですが、問題はスマホアプリの画面です。

Stravaスマホアプリ画面での消費カロリー

残念ながら仕事量は表示されず、信頼できない消費カロリーがしれっと居座っています。

 

つまり…パワメも心拍計も使っていない、または使っていてもサイコンがそれに対応していない場合は、StravaのPC画面に表示される推定仕事量(kj)から、おおよその消費カロリーを把握しましょう!、という結論となりそうです。

皆さんはStravaってPC画面で見ますか?私はあまり見ないです…

 

今回は、パワメも心拍計も使っていなくても、ちょっとしたひと手間でおおよその消費カロリーを知ることができますよ、というお話でした!

次回は、ライドの消費カロリーと日常生活の消費カロリー、この2つをどうやってつなぎ合わせるかです。これでやっと「ライドがある日のトータルの消費カロリー」についてお話できます!ほんと奥が深いです。

今日もお読みいただきありがとうございました!

 

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*1:日本語ではなく、English(US)を選択すると、に日本語では公開されていない様々な情報を調べることができます。コミュニティ(知恵袋的なやつ)にも結構役立つことが書かれていたりします。Google翻訳を使えば私のような英語大嫌い人間でも理解できる文章になって出てきます!

*2:https://support.strava.com/hc/ja/articles/115001294564-Strava-%E3%81%AE%E9%AB%98%E5%BA%A6%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8BFAQ

【vol.5】サイコンの消費カロリーってどうやって計算してるの?

これまではライドを抜きにした日常生活での消費カロリーと栄養素のお話をしてきました。ライド抜きの消費カロリー計算方法はvol.2をご覧ください!

wd19.hatenadiary.jp

今回から、 実際のライドで消費するカロリーについて考えていきます。

自転車乗りは「日常生活での消費カロリー」と「ライドでの消費カロリー」の両方を正しく把握することではじめて、トータルで何を食べればいいのか?どのように体重管理をしていけばいいか?を考えていけると思っています。(そうなのか?)なので、今回は栄養という観点から少し離れて、純粋に「自転車に乗ることで体内で燃やされたエネルギー」について突き詰めていければと思います。(専門外なのでドキドキ…)

◆もくじ

 

サイコンのカロリー表示とはいかに

「ライドでの消費カロリーなんて、サイコン見ればわかるやん」と、かつては軽く考えていました。けれどもよくよく考えてみると、サイコンに表示されるカロリーってどうやって計算されてるの?ほんとに正しい数値なの?という疑問が浮かんできませんか。

そう思って色々調べてみたんです。そしたら沼にハマるハマる…全然確かな情報が見つからない。結論から申し上げると、何を基準にしてどんな計算方法でカロリーを算出しているのか?という詳しい情報は企業秘密でオープンになっておりません。

このため、ここからの話は大まかに公開されている情報をつなぎ合わせた、あくまでも私の推測です。もしかしたら間違っている可能性があることをご了承いただけたら幸いです。

 

サイコンの消費カロリーの算出方法は主に3通り

サイコンの消費カロリーは、おおまかに分類すると以下の3通りの方法で算出されているようです。

  1. パワーメーターによる仕事量 から算出する
  2. 心拍数とVO2Max から算出する
  3. 走行速度と時間(+αで体重や車体重量、加速度など) から算出する

これらを見ると、「どの方法が一番正確なの?」という疑問が湧いてくるかもしれません。この記事を書くにあたって、一通り調べた感想からいうと「12>>>超えられない壁>>>3」の順に正確なんじゃないかな、という印象です。*1その理由はこの先を読んでいただければわかるので、長いですがぜひ読んでみてください!

 

そして、どのサイコンがどの方法を採用しているか、というのも気になると思います。大前提として、パワメを使わなければ1はできないし、心拍計をつけなければ2も不可能です。ただし、いくらパワメや心拍計をつけていても、サイコンにそれらのデータを使った消費カロリー計算機能が搭載されていなければ、1や2の方法を使うことはできないのです。

じゃあ、3しかできないサイコンを使っている人は、消費カロリーなんでゴミみたいな数字なのか!?←これにも一応策はあります。ちょっと面倒だけど…

 

今回、例に挙げるサイコンはGARMIN Edge520です。このサイコンには1~3すべての計算機能が搭載されています!

GARMINのデータを検証!

それでは、実際のログと消費カロリーを見比べてみたいと思います!今回は私が愛用しているGARMIN Edge520で取ったログをGARMIN connectで見ていきます。

東京にいた頃よく走っていた尾根幹→小山田周回のコースを基準にして比較。走った日によって距離と獲得標高が多少違っていますが、実際の消費カロリーとしては大差はないはず(はず…)。

 

まずはパワメあり心拍計ありのパターン

こちらは2018年5月19日のライド、GARMIN connectに表示されたデータです。

f:id:wd19:20191105202359p:image

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ここでは上で挙げた算出方法1「パワーメーターによる仕事量」で消費カロリーが求められています。心拍数のデータも取っていますが、パワメのデータが優先して使われるということです。

こちらで注目したいのが、消費カロリー1154kcal運動量1129kJ。似通った値ですね。パワトレをしている方なら既にご存知と思います。

ここで運動量といわれているのがパワーメーターで測定された仕事量(kj)です。仕事量とは、簡単に言うとペダルを回すのに使われたエネルギーを数値にしたものです。ただし、ペダルを回すのに使われたエネルギー=消費カロリーではありません

人間は自転車を走らせるために、糖やら脂肪やらを燃料にしてエネルギーを作りだします。けれども、そのうちペダルを回すのに使われるのは多くても20~25%だといわれています。残りの大部分は熱になってその辺に放散されます。(ローラーを回すと暑くなるのはそのせいです)このように、「燃やしたエネルギーのうち、ペダルを回すのに使われた割合」のことを「熱効率」といいます。

 

このため、仕事量(kj)から消費カロリー(kcal)を求めるためには以下のような処理が必要です。今回GARMIN connectに表示された1129kJという数値を例に計算してみます。

  1. 単位の変換:1kj=4.184kcalなので、1129kj×4.184kcal/kj≒269.8kcal
  2. 実際に体内で燃やされたカロリーを算出:熱効率23%とした場合、269.8kcal÷0.23=1173kcal

仕事量から消費カロリーを求めるために色々計算すると、結局のところ、仕事量と似たような数字の消費カロリーが出てくる、ということです。

今回GARMIN connectに表示された消費カロリーは1154kcal。近いですね。GARMINが何%の熱効率で計算しているかはわかりませんが、大体の考え方としてはこのような感じだと思います。

ただし、熱効率20~25%というのは、エリート中のエリートを対象にした調査から出てきた数字です。私たちのようなホビーライダーの場合、ペダリング効率や体の使い方がエリートより劣っていることが考えられるので、もしかしたらもっと低いかもしれません。その場合、実際の消費カロリーはもっと高くなる可能性がありますね。

 

このあたりの内容は、パワトレの教本「パワー・トレーニング・バイブル」に記載されています。

パワー・トレーニング・バイブル

パワー・トレーニング・バイブル

 

 

次にパワメなし心拍計ありのパターン

2018年3月31日のライドのデータです。当時はパワメデビュー前。

f:id:wd19:20191105202343p:image

ここでは算出方法2「心拍数とVO2Max」で消費カロリーが求められています。

ところで、なぜ心拍数とVO2Maxで消費カロリーがわかるのでしょう。実は、人間には「酸素を1リットル体内に取り込むと、約5kcal消費する」という普遍的な法則があります。このため、一連の運動で総計何Lの酸素を取り込んだかわかれば消費カロリーもわかる、というカラクリを軸に算出されているのです。

また、VO2Maxは最大酸素摂取量(ml/体重kg/min)と呼ばれている値で、その人が限界突破の運動をしたとき、1分間に体重1kgあたり何mlの酸素を体内に取り込めるかを示した値です。この値は年齢や性別で推定できるうえ、GARMINであればライドデータを元に勝手に計測してくれますよね。

たとえば体重60kgでVO2Maxが50ml/体重kg/minの人が、限界突破の運動を10分間行った場合、50ml/体重kg/min×体重60kg×10min=30000ml、つまり30Lの酸素が体内に取り込まれたことが計算できます。酸素1Lあたり5kcalなので、5kcal/L×30L=150kcal消費したことがわかります。

 

そして、限界突破の運動をしているときの心拍数が、最大心拍数です。実際の運動したときの心拍数が、最大心拍数に対して何%なのかがわかれば、VO2Maxに対して何%の強度で運動しているかも算出することができます。例えば、VO2Maxに対して50%の強度で10分間運動したということになれば、先ほどの例で計算すると、50ml/体重kg/min×0.5×体重60kg×10min=15000ml、つまり15Lの酸素が体内に取り込まれたとわかるわけです!

手短に説明する関係上、多少語弊もあるかもしれませんが、こんな雰囲気で心拍数から消費カロリーが求められています。GARMIN Edge520の場合、ここに身長・体重・年齢・性別・アクティビティクラス(運動習慣のレベル)などの情報が独自に加味されて、より正確に消費カロリーを求める仕組みがあるようです。(Firstbeatという会社の技術が使われているらしい)

 

この方法で出てきた1164kcalという数字、上で紹介した「パワーメーターによる仕事量」で求めたカロリーと比べると、そんなに大きな差はないように思えます。距離と獲得標高が多少違うので正確なことは言えませんが、十分使えるレベルじゃないでしょうか。

 

なお、心拍数による消費カロリー計算に対応しているのは、GARMINだとEdge500番台以降と130で、それより前に発売された機種にはこの機能は搭載されていないようです。*2*3*4*5*6

  

最後にパワメも心拍計もなし、のパターン

2018年1月2日のライドのデータ。あまりに寒くて心拍計すらつけることを放棄した日。この日の消費カロリー、ぶっ飛んでいます。

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消費カロリーが2172kcal!?ライド内容は5月19日、3月31日とたいして変わらないはずなのに、消費カロリーが倍近くなっています。というのもこれ、算出方法3「走行速度と時間」で求められたカロリーです。斜面の勾配や風による抵抗が考慮されないので全然正確じゃないですw 下りでも思いきりカロリーがカウントされますから…

じゃあ、パワメも心拍計も使っていない勢(もしくはサイコンが算出方法3にしか対応していない勢)は、消費カロリーなんでゴミみたいな数字なのか!?

冒頭にも書いた通り、一応策はあるんです。ただちょっと面倒なんです。去年まではすごく簡単だったのですが、アプリがアップデート(改悪?)されちゃって。ヒントはStravaです。これは次回紹介します!

 

結論(急いでる方はここからどうぞ)

 長くなりました。ここまでの内容を表にまとめるとこんな感じです。

GARMINで採用されている(と考えられる)消費カロリーの計算方法 f:id:wd19:20191107102144p:plain

(補足)GARMIN以外のサイコンの場合

パワメの仕事量から消費カロリーを求める場合、GARMIN以外のサイコンでも、出てくる数値にさほど大きな違いはないと思います。仕事量にかけ合わせる熱効率が多少違うくらいではないでしょうか。

一方、心拍データから求める場合、サイコンによって様々な計算方法が取れられているようです。VO2Maxをどのように設定するのか、心拍データをどのように処理するのか、で出てくる消費カロリーもある程度変わってくるかもしれません。

走行速度から求める場合は…最初から正確じゃないので機種間の違いを考える意味はなさそうです。


つまるところ、

  • パワーメーターまたは心拍計をつけていて、サイコンもそれに対応している:それなりに正確な消費カロリーが出てると思います
  • パワーメーターも心拍計も使っていない、またはサイコンが対応していない:ちょっその数字、信用できません

 という結論にたどり着きました!

 

次回はパワーメーターも心拍計も使っていない、またはサイコンが対応していないときの対策法をご紹介します。結構マニアックな内容なので、果たして需要があるんやろか?と不安になっております。

なので次々回の予告も。ライドの消費カロリーと日常生活の消費カロリー、この2つをどうやってつなぎ合わせるかです。これがわかればライドありの1日トータルの消費カロリーを把握できるはず!

以上、こんな長い文章読んでいただいてありがとうございました!!

 

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*1:ちなみに、本気の本気で正確に消費カロリーを調べようという場合、ライド中にガスマスクを装着して、体内に取り込んだ酸素の総量を測定しないといけません。体内に酸素を1L取り込むと約5kcal消費する、という普遍的な法則がわかっているため、この方法が最も正確なんだそうです。

*2:https://forums.garmin.com/sports-fitness/cycling/f/edge-520-520-plus/125403/calculate-v02-max-and-accurate-calories/695878#695878

*3:http://static.garmin.com/pumac/Edge_500_OM_EN.pdf

*4:https://www.firstbeat.com/en/consumer-products/products/

*5:https://www.firstbeat.com/en/consumer-feature/calories-burned/

*6:https://assets.firstbeat.com/firstbeat/uploads/2015/10/white_paper_energy_expenditure_estimation.pdf

熊野古道ヒルクライム2019を振り返って

今シーズン最終のヒルクライムレース!
先月の高梁ヒルクライムは頑張ったけど結果はついてこなかった。今回こそ納得いくレースがしたい!と思って臨みました。

 

レース前日、勝浦港。快晴。11月なのに暑い。

 

前泊、輪行で乗り込む

今回は夫のサポートなし、単独で輪行・前泊です。いつも会場まで車を運転してくれる夫の有り難みが身に染みます。新大阪から特急くろしおで約4時間、紀伊勝浦駅が最寄りです。

前日は受付前に沖里さんと合流して、レースコースの試走へ。今回初めての参戦のため、沖里さんのアテンドがものすごくありがたかったです!今回エントリーした、妙法山阿弥陀コース(短い方のコース、距離約9km)は思っていたより緩斜面でした。勝尾寺よりも緩いくらい。全行程の2/3くらいまでゆるゆると登って試走は終了。

前日晩は21時前に就寝。慣れない電車移動で疲れていたのか寝つきはよかったです。翌朝3時半に目が覚めて、すっきり寝れた感じがしました。よかった。

 

前半は夢のような展開、後半は…

スタート前の待機中、陽が出るまではウインドブレーカーを着ても寒いくらい。ハーフ丈で素足を出したのを後悔。ところが、パレードランを終えた辺りから朝日がじりじり照ってきて、寒いどころか暑くなってきました。(半袖ジャージの下に長袖のインナーを着ていましたが、レース中は半袖の方がよかったと走りながら後悔しました)

スタート位置につくとすぐに号砲。去年優勝のKさん筆頭に、私を含めて4人が飛び出し集団になります。序盤は3番手で様子を見ていましたが1km過ぎ、2つ目のヘアピンカーブで2番手の方の前が少し離れた隙に、Kさんの後ろにつきます。

 

今までのどんなレースでも、Kさんの背中は一瞬で見えなくなる、というのがお決まりのパターンでした。そんなKさんの背中を追っている状況に驚きながらも必死について行きます。

少し斜度が上がる那智の滝お土産街も強めに踏んでぴったり離れず。2.5km地点の小さな下りでも呼吸を整えるくらいの余裕はありました。その先も小刻みに斜度が変化する中ぴったり後ろについていました。

けれども4.5km、ちょうど中間地点の斜度が上がるポイントで限界を迎えます。息が上がってこれ以上この強度で踏むのは無理そう…無念にもここで千切れます。そこから1kmくらいはなんとか背中が見えるくらいの位置で足掻いていましたが、残り3kmの展望台地点では完全に見えなくなってしまいました。

 

そして、まだレースの1/3が残っているにも関わらず、脚は限界かもしれない。3位以下とどれくらい差がついたか全くわからない状況のなか、「追い上げられたらどうしよう」というえらく後ろ向きのモチベーションで脚を回します。とにかく早く終わって欲しかった。

あろうことか、コースを正確に覚えていなかったせいで、ゴールまでの距離が曖昧。残りキロ数の表示板もなし。これでは残り距離を見定めた走りができない。やってしまった。ひーひー言いながら走っていると、なんだかお腹が痛くなってきました。

ちょうど1週間前、FRAT練で十三峠を登った時に激しい腹痛に襲われて大失速した記憶が蘇りました。やばい、どうか最後まで走らせてー!!その辺りで初めてパワメを見て、自分がどれだけ踏めなくなっているか思い知らされます。

どうにもこうにも力が出ないので、斜度の変化に合わせて少し踏み休んで、少し回復したら踏み直すの繰り返しで耐え凌ぎます。唐突にゴールが見えてきたのでラスト上げてフィニッシュ!

預け用のリュックが泊り用荷物でパンパンで、上に水を持ってこれなかった。ゴール地点の給水もなかったので、喉が渇いて干からびそうでした…

 

結果は2位!

ゴール後すぐにKさんと話しました。途中までだけどついていけてすごく嬉しかったこと、後ろを走らせて貰ったことへのお礼を伝えました。Kさんも、地面に映る影で私がついていたのをわかっていたそう。「勇気が出ました!」とおっしゃっていましたが、「勇気」という単語がまさに歴戦の勝者の言葉だよなぁと思いました。

下山してリザルトを確認。(ネットタイム測定だったので順位に自信がありませんでした)よかった、2位だったと胸を撫で下ろします。3位の方は30秒差まで迫っていました。

3位の方とお話したら、レースはこれが初めてとのこと。このレースに出ると決まるまでは、美味しいものを食べにいくために走っていたとおっしゃってました。初めてでこの走りができるなんて、これはものすごい才能?フィジカル?センス?の持ち主だなと思いました。これからレースにたくさん出るようになったら、どんどん上位に上がっていくんだろうな。

今までレースに出たことがないだけで、実はものすごい走力の持ち主がいっぱいいるんだろうなと思わされた出来事でした。

 

振り返り

今回のレースでの一番の収穫は、雲の上の存在だったKさんに(途中までだけど)ついていけたことです。なぜついていけたのか、いくつか思いつく点を挙げてみます。

  • 平均斜度5.1%。比較的緩斜面で一部下りもあり、得意なコースだった。(これが一番大きい!)
  • スタートから5kmくらいまでアウターでガンガン踏んでいた。(踏めなくなってきて初めて自分がアウターで走っていたことに気付いた)
  • Kさんについていくときはパワメは全く見ず。パワー値を見て怯まないように。(8月の高取ヒルクライムではパワー値を見てついていけなくなった。淡々と走るならそれで正解だけど…)

一方、前半頑張りすぎたせいで後半は失速、軽く腹痛を起こして苦しい走りになってしまいました。シーズンラストではありますが、いい感触のレースができたので、今後はある程度高い強度を維持できるように、またじっくり練習していこうと思いました!

 

チーム名はおはみの、ジャージはMIVRO、サドルのキーホルダーはGSJ!一緒に走ってくださった皆さまありがとうございました。

 

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